主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「す、凄い……
でも、私ってそんな頼りないのかな?(笑)
…………頼りないか…(笑)」
自嘲気味に笑い、ミネラルウォーターを取り出した。
グラスに注ぎ、コクッコクッと飲んだ。


「━━━━何しようかな~
………よし!お掃除しよう!」

そして、物置を開ける。
掃除機を取り出そうとする。

「ん?」

【紅葉様。
お掃除の必要はありませんので、触らないように】
大きな付箋が貼ってあり、雲英の丁寧な字が並んでいた。

「なっ…!!?
……………じゃ、じゃあ洗濯!」

【洗濯をする必要ありませんよ?紅葉様】

「な、な、なんで!!?
……………こうなったら!一人は苦手だけど、お買い物に出掛けてやる!!」

着替えるために、クローゼットに向かう。

「………ん?
なっ━━━!!!?」

【約束しましたよね?
外出はできる限り、しないでください。
なので、着替える必要もないですよね?】

「なんで、バレてるのーーー!!!」

どこに行っても付箋が貼ってあり、紅葉は面を食らってしまっていた。

試しに、包丁を見てみる。
「ん?あれ?
…………ない…」

包丁が見当たらないのだ。
いつも、雲英がしまっている所に入っていない。

辺りを探してみるが、どこにもしまっていないのだ。

当然のことながら、IHにも“触らないでくださいね”と付箋が貼られていた。


紅葉は、へなへなとソファに座る。
「なんか、疲れた……
何もしてないのに……」

ボーッと、窓の外を見ていると━━━━━

ピンポーンと、呼び鈴が鳴った。

「え?
まだ、お昼じゃないのに……」
インターフォンを確認する。

「更井さん!?」

「おはようございます、お嬢様!」
「おはようございます、更井さん!」

「母に、今日お嬢様がお一人でお留守番をしていると聞いたので、僕で良ければ話し相手になれればと思って……!
ついでにお弁当も、お持ちしました!」

「そうですか!
わざわざ、ありがとうございます!
今、オートロックを開けますね!」

ロックを開け、玄関のドアの鍵を開ける。
戻ろうとして玄関の鏡に目が行く。

「わ!/////こんな格好、更井さんに見せられない!!」

紅葉は、雲英のスウェットを着ている状態だ。
慌てて、クローゼットに向かうのだった。
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