3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
___こうして迎えた、約束の日。
私は当日ギリギリまで半信半疑だったけど、前日に楓様から待ち合わせ時間と場所が記載されたショートメールが届き、ようやくそこで現実味を帯びていき、その日の夜はなかなか寝付ける事が出来なかった。
とりあえず、季節は秋真っ只中なので、桜井さんの見立てで仕上がった今日のコーデは、白色丸首ニットにハイウエストな無地でワインレッドのマーメイドフレアスカート。そしてショート丈の茶色いスエードジャケットに黒色革製ショルダーバッグとショートブーツ。それからスカートの色に合わせた深みのある赤色の丸みを帯びたベレー帽。
全身鏡でその姿を写した時、自分でも季節感に合った大人ぽい雰囲気に仕上がったと思いながら、彼女の素晴らしいセンスに心から感謝の気持ちを送る。
そして、時間に遅れないように電車を降りてから、待ち合わせ場所である駅の入り口へと向かう。
今日は土曜日で、しかも割と大きい駅なので周囲には沢山の人で溢り、果たして楓様を見つけることが出来るのか不安に思っていた時だった。
「ねえ、あそこに立っている人めちゃくちゃ格好良くない?ていうか超美人?」
「モデルなのかな?男の人であんな綺麗な人初めて見たわー」
隣で黄色い声を出して、頬を染めながら小声で騒いでいる若い女性達の会話が耳に入り、その内容からして私は誰なのかすぐに分かった。
「楓様、お待たせして申し訳ございません」
女性達が指差す方向へと向かい、人混みを掻き分けて抜けた先には、ポケットに手を突っ込み柱に寄りかかりながら、気怠そうに遠くを見つめている楓様が立っていて、私はその姿に不覚にも思いっきり心臓を撃ち抜かれる。
そこには、白色ハイネックセーターにグレーのジャケットと焦茶色のチノパン。加えて小さめの黒色ショルダーバッグに黒色革靴というスーツではない、初めての楓様の綺麗めスタイルな私服姿がとても素敵で輝いて見え、見事に魅了されてしまう。
「……おい。さっきから何そこで突っ立てるんだよ」
完全にその姿に見惚れてしまった私は暫くその場で固まってしまい、それを不審がるように軽く睨んできた楓様の視線を受け、ようやく現実世界へと引き戻された。
「あ、すみません。私服姿がとても新鮮なものでして、つい……」
心を奪われてしまいましたとは流石に言えないので、私は誤魔化すように苦笑いを見せる。
「それはお互い様だろ」
すると、ポツリと呟いた楓様の一言に、私の心は小さく跳ね上がった。
全然大した話じゃないのに、楓様にも私の私服姿を新鮮だと思って頂けた事が嬉しくて、それだけで宙に舞うような気持ちになれる。
「いいから時間も限られているし、さっさと行くぞ」
けど、楓様はそんな私を置き去りにして、足早に歩き出していき、私は慌ててその後を追い掛けて行ったのだった。