3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
そうこうしていると、遠くの方から段々とこちらに近付いて来る足音が聞こえ始めてきて、咄嗟に入口に視線を向けると、暫くしてからスーツ姿の楓さんが真顔で応接室へと入って来た。
「楓さん!」
私は嬉しい気持ちが全面に出てしまい、満面の笑みで彼を出迎えると、こちらの反応とは裏腹に、楓さんは無表情のまま何も言わず軽く周囲を見渡してから応接室の扉を静かに閉めた。
そんな彼の行動を咄嗟に理解した私は、自分の行動が軽率だったということに気がつき、バツが悪くなって視線を足下へと落とす。
「す、すみません。やはり今はまだホテル用務以外では訪ねるべきではなかったですよね……」
婚約が継続している中、こうして面会しているところを誰かに見られてしまったら、職場内で変な噂がたってしまうかもしれない。受付の方にも怪しまれてしまったし……。
そうなると、楓さんの職務にも何かしらの悪影響を及ぼしてしまう恐れがある気がして、今更ながらに今後の身の振り方をよく考えなければダメだと私は猛省する。
「いや、そうじゃない。ただ、扉が開いていたら美守に触れないだろ?」
しかし、何食わぬ顔でそう言い放たれ、予想外の返答に一瞬目が点になった途端、楓さんは突然包み込むように私を抱き締めてきて、思わず肩が大きく震えてしまった。
「やっぱり癒されるな。今日は特に会議やら顔合わせやらで煩わしかったし」
溜息混じりに愚痴をこぼす彼の言葉が嬉しくて、私もそんな楓さんを受け止めるように背中にそっと手を回す。
「本当にいいんですか?私は、楓さんにご迷惑を掛けていませんか?」
けど、やっぱり不安な気持ちは拭えず、恐る恐る確かめてみると、楓さんは抱き締めていた手を緩めて向き合うように視線を合わせてきた。
「何がだよ。この俺が体裁を気にするとでも思ってんのか?そんなくだらない話をしに来たわけじゃないだろ」
そして、眉間に皺を寄せながら不服そうにそう仰るので、私はこれまでのことを振り返ると妙に納得してしまい、自然と口元が緩みだす。
「ええ、そうでしたね。会いたかったです、楓さん」
昨日もずっと一緒にいたのに、満たされることのない欲求が走り出して、ついそれを口にしてしまう。
自分がとても貪欲な人間であると知ってしまい、しかも楓さんの前では包み隠さず気持ちを伝える癖がついてしまったので、もう歯止めが効かない。
「俺もだよ。出張前に美守の顔が見れて良かった」
すると、楓さんはやんわりと微笑むと、私の顎を親指で軽く上げてそのまま私の唇に自分の唇を重ねる。
それから一回だけでは終わらない、優しくて、甘いキスを何回もされるうちに、枯渇していた心が徐々に満たされていく。
その時、楓さんの片手が腰に回ったかと思うと、抱き締められたまま先程座っていたソファーに強制的に座らされ、驚いた目を向けた途端、今度は少し強引に唇を奪われ、舌が口の中に侵入してきた。
「……ん」
やはり始めはつい体が反応してしまうけど、昨日で耐性はある程度出来たので直ぐに受け入れ、またもや楓さんの溶けるような舌遣いにより、高揚とした気分へと変わり始める。
こうしてどんどんと彼の熱に溺れそうになる直前、はたと今自分がいる場所を思い出し、私は慌てて楓さんから離れた。
「か、楓さん。ここは会社ですから、こういう所では止めた方が……」
万が一、誰かが訪ねてきてこの場を見られてしまったらそれは流石に不味い気がして、この流れを中断させようと、尚もキスを迫ろうとする楓さんの唇を指で軽く押さえてしまった。
「知るか。これから暫く会えなくなるんだし、いいだろ。まだ全然足りないんだよ」
しかし、私の懸念を不機嫌そうに指と共に払い除けると、琥珀色の目を光らせてから、お構いなしに私の唇に食らいついてくる。
「楓さん!」
私は嬉しい気持ちが全面に出てしまい、満面の笑みで彼を出迎えると、こちらの反応とは裏腹に、楓さんは無表情のまま何も言わず軽く周囲を見渡してから応接室の扉を静かに閉めた。
そんな彼の行動を咄嗟に理解した私は、自分の行動が軽率だったということに気がつき、バツが悪くなって視線を足下へと落とす。
「す、すみません。やはり今はまだホテル用務以外では訪ねるべきではなかったですよね……」
婚約が継続している中、こうして面会しているところを誰かに見られてしまったら、職場内で変な噂がたってしまうかもしれない。受付の方にも怪しまれてしまったし……。
そうなると、楓さんの職務にも何かしらの悪影響を及ぼしてしまう恐れがある気がして、今更ながらに今後の身の振り方をよく考えなければダメだと私は猛省する。
「いや、そうじゃない。ただ、扉が開いていたら美守に触れないだろ?」
しかし、何食わぬ顔でそう言い放たれ、予想外の返答に一瞬目が点になった途端、楓さんは突然包み込むように私を抱き締めてきて、思わず肩が大きく震えてしまった。
「やっぱり癒されるな。今日は特に会議やら顔合わせやらで煩わしかったし」
溜息混じりに愚痴をこぼす彼の言葉が嬉しくて、私もそんな楓さんを受け止めるように背中にそっと手を回す。
「本当にいいんですか?私は、楓さんにご迷惑を掛けていませんか?」
けど、やっぱり不安な気持ちは拭えず、恐る恐る確かめてみると、楓さんは抱き締めていた手を緩めて向き合うように視線を合わせてきた。
「何がだよ。この俺が体裁を気にするとでも思ってんのか?そんなくだらない話をしに来たわけじゃないだろ」
そして、眉間に皺を寄せながら不服そうにそう仰るので、私はこれまでのことを振り返ると妙に納得してしまい、自然と口元が緩みだす。
「ええ、そうでしたね。会いたかったです、楓さん」
昨日もずっと一緒にいたのに、満たされることのない欲求が走り出して、ついそれを口にしてしまう。
自分がとても貪欲な人間であると知ってしまい、しかも楓さんの前では包み隠さず気持ちを伝える癖がついてしまったので、もう歯止めが効かない。
「俺もだよ。出張前に美守の顔が見れて良かった」
すると、楓さんはやんわりと微笑むと、私の顎を親指で軽く上げてそのまま私の唇に自分の唇を重ねる。
それから一回だけでは終わらない、優しくて、甘いキスを何回もされるうちに、枯渇していた心が徐々に満たされていく。
その時、楓さんの片手が腰に回ったかと思うと、抱き締められたまま先程座っていたソファーに強制的に座らされ、驚いた目を向けた途端、今度は少し強引に唇を奪われ、舌が口の中に侵入してきた。
「……ん」
やはり始めはつい体が反応してしまうけど、昨日で耐性はある程度出来たので直ぐに受け入れ、またもや楓さんの溶けるような舌遣いにより、高揚とした気分へと変わり始める。
こうしてどんどんと彼の熱に溺れそうになる直前、はたと今自分がいる場所を思い出し、私は慌てて楓さんから離れた。
「か、楓さん。ここは会社ですから、こういう所では止めた方が……」
万が一、誰かが訪ねてきてこの場を見られてしまったらそれは流石に不味い気がして、この流れを中断させようと、尚もキスを迫ろうとする楓さんの唇を指で軽く押さえてしまった。
「知るか。これから暫く会えなくなるんだし、いいだろ。まだ全然足りないんだよ」
しかし、私の懸念を不機嫌そうに指と共に払い除けると、琥珀色の目を光らせてから、お構いなしに私の唇に食らいついてくる。