3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
……ああ、昨日もたくさんしたのに。

自分は貪欲だと思っていたけど、楓さんも私に負けないくらい、もしくはそれ以上に貪欲なお方なのですね。

そう思っていると、ふと楓さんは私から離れ、何やら首の辺りをじっと見つめてきた。

「あ、あの……どうなさいましたか?」

なぜ凝視されているのか分からず首を傾げると、急に彼の長い指が伸びてきて、肩にかかっている私の髪をそっと上げる。

「一日経ってもまだこんなにくっきり残ってるのか……」

そして、何やら申し訳なさそうに少し影を落とした表情でそう呟く彼の言葉がようやく理解出来、私は一気に体の温度が上昇し始めていく。

「も、もう楓さんったらやり過ぎですよ。隠すの大変なんですから」

一応制服は首元までワイシャツのボタンを閉めているからそこまでではないけど、首筋のところだけはどうしようも出来なかったので、髪を下ろして何とか周りから気付かれないように今日一日慎重に行動をしてきた。

だから、反省の色は見えてるけど、その苦労を知って欲しくて私は軽く頬を膨らませる。

「悪い。俺って思ってた以上に独占欲強めなんだな。これからは自重するよ」

けど、彼の“独占”という言葉に舞い上がってしまい、それ以上責める気にはなれなかった。

我ながらなんて単純なのだろうと思っていると、ふと脳裏にある人物の顔が浮かび上がってくる。

「……そういえば、懇親パーティーの後に泉様と鉢会ったのですが、その時にも付いていましたね。……もしかして、それもそういうことなのですか?」


この場で当時のことを蒸し返すなんて、私は一体何をしているのだろうと自己嫌悪に陥るも、やっぱり改めて思うとショックを誤魔化せなくて、嫉妬心からつい聞かずにはいられなかった。

「あの時はあの女にせがまれたから仕方なく。そもそも、美守以外の人間に興味なんかないし、ましてや独占したいなんて有り得ないから」

しかし、楓さんは呆れるような目で私を見てくると、至極当然のような顔でそう断言してきたので、その潔さに一瞬圧倒されてしまう。

確かに、彼の性格と泉様が愛されないと嘆いていた言葉を思い出すと、楓さんにとって私の質問は何ともバカげた話なのかもしれない。

「そんなことより時間は限られてるんだから、ギリギリまで味わせろよ」

なんて思考に耽っていると、そんな余裕は与えさせないと言わんばかりに、楓さんは甘い声で艶っぽく囁くと、有無を言わさず再び私の唇を塞いできた。

まるで乾いた喉を潤すように、何度も私を求めては絡みついてくるキス。
そこから感じる痛いほどの執着心。

よくよく考えてみれば、長年彼は人の愛に飢え続けていた。
だから、楓さんが私に向けてくる愛情と欲求は、もしかしたら自分が思っている以上にかなり奥深いのかもしれない……。

そう感じ始めた時、私はそんな彼の全てを一身に受け止めたくて、されるがまま身を委ねることにしたのだった。
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