3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
竜司様が立ち去った後も、楓さんは黙ったまま険しい表情で一点を見つめている。
“どっちに転んだとしても、何かを失う”
先程の竜司様の言葉が何度も頭の中で繰り返され、その意味が理解出来る私はなかなか動こうとしない彼が心配になり、思わず手を握ってしまった。
「大丈夫だよ。悪かったな俺らの事情に巻き込んで」
すると、楓さんはいつもの柔らかい表情に戻ると、少し影掛かった笑顔で謝ってきたので、私は勢い良く首を横に振る。
「とんでもないです。私は楓さんの側を離れるつもりはないので、どんな事があっても平気です」
いくら愛し合えたとしても、楓さんはしがらみから解放されたわけではないので、彼を取り巻く闇を少しでも払えるのなら、どんなことでも支えになりたい。
そんな強い思いを込めて私は真剣な眼差しを彼に向けると、急に楓さんの表情が曇りだし、私から視線を逸らした。
「聞いただろ。別に隠すつもりはなかったけど、俺はこれまで目的の為なら手段を選ばなかった。簡単に人を踏み潰してきたし、何人もの人間を利用してきた。だから、本来なら俺は美守にそこまで言われるような人間じゃないんだよ」
それから思い詰めるような目で自傷気味に笑う楓さんの姿が痛々しくて、苦しくて、切なくて。
気付けば、人目を憚らず勢いのまま楓さんの腕に抱きついていた。
「ど、どうした?」
表情は見えないけど、不意をついてきた私の大胆行動に、楓さんが戸惑っているのが声でよく分かる。
「そんなの関係ありません。楓さんが何をされてようと、どんな方であろうと、私はその全てを愛しているんです。だから、そんな不安は捨てて下さい。……お願いですから、もうこれ以上そんな悲しい表情はしないで下さい」
これからはずっと笑って欲しかったのに。
楓さんの悲しくて、辛そうな顔はもうあの夜だけにして欲しかったのに。
まだそんな不安を抱えていらっしゃったのであれば、私のこの想いもまだ十分に伝えきれていなかったのだろうか……。
そう思うと何だか悔しくて、とにかく私がどれだけ楓さんを大切に想っているかを知って欲しくて。
溢れそうになる涙を必死に堪えながら、私は彼の腕にしがみ付く。
その時、楓さんは突然私の肩を抱くと、そのまま胸の中へと引き込み、優しく抱き締めてくれた。
「か、楓さん!?人前ですよ!?」
その行為自体はとても嬉しいけど、流石に外でされると恥ずかしさの方が大いに勝り、私は慌てふためきながら周囲を見渡す。
「先に抱き付いたのはそっちだろ?」
けど、楓さんは全く動じる事なく、穏やかな口調でそう言うと、更に私の体を胸の中へと引き寄せてきた。
「そ、そうですけど……これでは社員の方々に私達の関係が知られてしまうのでは……」
確かにきっかけを作ったのは自分なので強くは出れないけど、こんなに堂々としては後で困るのは楓さんなのに。
そう思いながら、痛い程突き刺さってくる周囲の視線を浴び続ける私は、彼を見上げて弱々しく訴える。
「かもな。でも、悪けど今はそんな事どうでもいい」
しかし、とても満足そうな目で微笑まれてしまっては、もうこれ以上何も言えるわけがない。
むしろ、それで楓さんの気持ちが落ち着くなら、いくらでも私を好きにして欲しいと思えてくる。
そんな愛しさに身を預け、私もこの温もりを手放したくなくて、人目を気にせず彼の胸の中に顔を埋めてそっと抱きしめ返した。
“どっちに転んだとしても、何かを失う”
先程の竜司様の言葉が何度も頭の中で繰り返され、その意味が理解出来る私はなかなか動こうとしない彼が心配になり、思わず手を握ってしまった。
「大丈夫だよ。悪かったな俺らの事情に巻き込んで」
すると、楓さんはいつもの柔らかい表情に戻ると、少し影掛かった笑顔で謝ってきたので、私は勢い良く首を横に振る。
「とんでもないです。私は楓さんの側を離れるつもりはないので、どんな事があっても平気です」
いくら愛し合えたとしても、楓さんはしがらみから解放されたわけではないので、彼を取り巻く闇を少しでも払えるのなら、どんなことでも支えになりたい。
そんな強い思いを込めて私は真剣な眼差しを彼に向けると、急に楓さんの表情が曇りだし、私から視線を逸らした。
「聞いただろ。別に隠すつもりはなかったけど、俺はこれまで目的の為なら手段を選ばなかった。簡単に人を踏み潰してきたし、何人もの人間を利用してきた。だから、本来なら俺は美守にそこまで言われるような人間じゃないんだよ」
それから思い詰めるような目で自傷気味に笑う楓さんの姿が痛々しくて、苦しくて、切なくて。
気付けば、人目を憚らず勢いのまま楓さんの腕に抱きついていた。
「ど、どうした?」
表情は見えないけど、不意をついてきた私の大胆行動に、楓さんが戸惑っているのが声でよく分かる。
「そんなの関係ありません。楓さんが何をされてようと、どんな方であろうと、私はその全てを愛しているんです。だから、そんな不安は捨てて下さい。……お願いですから、もうこれ以上そんな悲しい表情はしないで下さい」
これからはずっと笑って欲しかったのに。
楓さんの悲しくて、辛そうな顔はもうあの夜だけにして欲しかったのに。
まだそんな不安を抱えていらっしゃったのであれば、私のこの想いもまだ十分に伝えきれていなかったのだろうか……。
そう思うと何だか悔しくて、とにかく私がどれだけ楓さんを大切に想っているかを知って欲しくて。
溢れそうになる涙を必死に堪えながら、私は彼の腕にしがみ付く。
その時、楓さんは突然私の肩を抱くと、そのまま胸の中へと引き込み、優しく抱き締めてくれた。
「か、楓さん!?人前ですよ!?」
その行為自体はとても嬉しいけど、流石に外でされると恥ずかしさの方が大いに勝り、私は慌てふためきながら周囲を見渡す。
「先に抱き付いたのはそっちだろ?」
けど、楓さんは全く動じる事なく、穏やかな口調でそう言うと、更に私の体を胸の中へと引き寄せてきた。
「そ、そうですけど……これでは社員の方々に私達の関係が知られてしまうのでは……」
確かにきっかけを作ったのは自分なので強くは出れないけど、こんなに堂々としては後で困るのは楓さんなのに。
そう思いながら、痛い程突き刺さってくる周囲の視線を浴び続ける私は、彼を見上げて弱々しく訴える。
「かもな。でも、悪けど今はそんな事どうでもいい」
しかし、とても満足そうな目で微笑まれてしまっては、もうこれ以上何も言えるわけがない。
むしろ、それで楓さんの気持ちが落ち着くなら、いくらでも私を好きにして欲しいと思えてくる。
そんな愛しさに身を預け、私もこの温もりを手放したくなくて、人目を気にせず彼の胸の中に顔を埋めてそっと抱きしめ返した。