3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「……お、お言葉ですけど、確かに、私みたいな人間は珍しいかもしれませんが、それよりも、あのような行為を人に見られて平然としている方がよっぽどおかしいと思いますっ!」

そして、今まで貯まりに貯まっていたフラストレーションがまさかのここで爆発してしまい、はたと気付いた時にはもう手遅れだった。

「…………は?なに?従業員の分際で俺に口答えすんの?」

まるで威嚇するように声が低くなり、みるみる内に険しい顔付きへと変わっていく東郷様は、私を思いっきり睨みつけてくる。

その視線にどんどんと血の気が引いてきて、兎に角自分がしてしまった失態を謝罪すべく、私は勢いよく頭を下げた。

「も、申し訳ございませんっ!大変失礼な事を致しました!先程の発言は取り消します!」


……ああ、なんという事でしょう。

御子柴マネージャーから、決して粗相がないようにと念を押されたというのに。

もうこうなってしまった以上どうしようもない事だけど、これ程までに自分が愚か者だったとは信じられない。

私は涙が出そうになるのを何とか堪えながら、東郷様のお言葉が来るまでは、ひたすらこの体制を維持し続けた。

「あんた名前は?」

「天野です!」

「下の名前も」

「天野美守です!」

背筋が凍るような東郷様の冷たい声に、体を震わせながら私は問い掛けに対し即座に答える。


「まったく、東郷グループの人間に楯突くような奴が居るとはここの教育はどうなってんだか。とりあえず、もう目障りだからさっさと出てけ」

そして、深い溜息と共に言われた退出命令に、私はようやく頭を上げると、再び深い一礼をして、足早にこの場から立ち去ったのだった。
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