転生アラサー腐女子はモブですから!?
「ねぇ~アイシャ。誰か気になる子息は居ましたか?」

「気になる子息ですか?」

 赤髪のアイツの顔が突然頭に浮かび、慌ててそれを打ち払う。

「別に誰も印象に残っている方は……、あっ! そう言えば、なぜ王太子殿下までいらしたのですか? たかが伯爵令嬢の誕生日に」

「わたくしもビックリしましたわ。念のため王妃さま宛に招待状を送りましたが、まさか王太子殿下が来てくださるとは思いませんでした。まぁ、ダニエルは王太子殿下の学友として王城に行ってますし、その縁で参加くださったのでしょうけど」

「それになぜ子息ばかりでしたの?」

 アイシャの何気ない質問に、リンベル伯爵夫妻は顔を見合わせる。

「アイシャ、貴方の将来の婚約者を見定めるためよ」

「へっ!? 婚約者って……、わたくしまだ七歳ですが?」

「何を言っているのアイシャ! 幼少期から婚約者を見繕うのは貴族社会では常識よ!!!!」

(ウソでしょ!? 通りで朝から両親がソワソワしていたわけだ)

 アイシャは持っていたカップから紅茶がこぼれている事にすら気づかない程のカルチャーショックを受けていた。

「アイシャ!! 紅茶が、紅茶がこぼれていますわぁ!」

 母の叫び声に我に返ったアイシャは、その後泣きながら両親を説得する羽目になる。

「あんなに沢山の男性に囲まれてアイシャはとってもとっても怖かったのです! 婚約者なんて、婚約者なんて……、わぁ~ん! 嫌だぁぁぁ!!」

(わたくしの腐女子妄想パラレルワールドを邪魔するヤツは誰であろうと排除だ!)

婚約者なんぞ見繕われた日には、今後邪魔されるに決まっている。

(願いはただ一つ! 貴族社会の煩わしい結婚なんてせず今世も腐女子として自身の趣味を満喫するのみだ!!!!)

 必殺泣き落としを敢行したアイシャの願いが両親に伝わったかは不明だ。しかし、あの誕生日以来、婚約者の話が全く出なくなった。

 そして、アイシャの七歳の誕生日から数日後。

 リンベル伯爵家にアイシャの大絶叫が響き渡った。

「なんで、ノア王太子から手紙なんて届くのよぉぉ!!!!」
< 16 / 281 >

この作品をシェア

pagetop