転生アラサー腐女子はモブですから!?
「いや、簡単な話さ。私はドンファン伯爵とグレイスの弱みを手に入れておきたい。今後、結婚するにあたり義父にも、グレイスにも、大きな顔はされたくないのでね。彼等の弱みを掴んでおけば、彼等も大きな顔は出来まい」

「しかし、侯爵家は伯爵家より格上。彼等の弱みを握らなくとも、二人を支配する事は可能では有りませんか?」

「お前はバカなのか? 私が支配したいと考えているのはドンファン伯爵の持つ裏の顔だ。何故お前と接触していると思う? 裏を支配するには、ドンファン伯爵と実質的な支配者であるグレイスを掌握しなければ、後々面倒な事になるだろう。お前も、後々ドンファン伯爵に出しゃばられても、困るだろうが」

「ははは、そりゃそうですねぇ~。では、リアム様はどんな情報をお知りになりたいのですか? 未来のボスには惜しみませんよ」

 目の前に座る男の口角が吊り上がる。

「物分かりのいい部下は実に良い。そうだなぁ……、グレイスが巷で『白き魔女』と言われているのは知っているな? しかし、彼女のさきよみの力は偽物だろう?」

 男の目が驚きで見開かれ、眼光鋭く睨まれる。

「リアム様は、何処までご存知なのですか?」

「お前達が、グレイスの行った予知を実現させるために、協力していると言う事は調査済みだ」

「まさか!? あれは絶対に証拠が表に出ないように管理してあるはず……」

「あぁ、私達も証拠までは突き止めていない。しかし、グレイスを黙らせるには、その証拠を突きつけねば難しいだろうなぁ。証拠がなければ言い逃れは可能だからな。お前達も気付いているのではないか? 今の予知ではいずれグレイスが偽物だとバレると言う事を」

 目の前の男の顔が、苦虫を噛み潰したように歪む。この男もわかっているのだ。このままドンファン伯爵の下についているだけでは、自分自身が破滅すると。それだけ、グレイスの予知は危うい橋を渡っている。

「ここだけの話だが……、ノア王太子はグレイスが白き魔女では無いと考えている。しかしウェスト侯爵家がバックにつけば、今以上に大規模な予知も実現可能になる。だが、グレイスが出しゃばれば、それも上手く行くか分からない。あの女は自身の欲を満たす事しか頭にないからな。今後、あの女を自由に操る為にも、グレイスの予知が偽物である証拠は握っておきたい。後は、今までのドンファン伯爵の裏の顔を示す証拠があれば、ドンファン伯爵も掌握可能と言う訳だ」

「しかし……」

 リアムの言葉を受けても、まだ逡巡(しゅんじゅん)している男に、悪魔の囁きを落とす。

「お前は、グレイスとドンファン伯爵を支配する立場を手に入れたいとは思わないのか? 今まで顎で使われて来た立場が逆転するのは、さぞかし気分が良いだろうなぁ。誰の下につくべきか、よく考える事だ」

 男の顔が愉悦に歪む。
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