転生アラサー腐女子はモブですから!?
庭園内に広がるピンクな空気を打ち破り響いた涼やかな声に、空気と化していた侍女の皆さま方が一斉に頭を下げる。
(――――助かったぁぁ)
半泣き状態でノア王太子に押し倒されているアイシャの角度からは、割って入ってくれた神の尊顔は見えない。
しかし、少し高めの綺麗な声から女性だということはわかった。
(誰かは知りませんが、助けて頂き、感謝感激、雨あられでございます)
頭の中で顔もわからぬ救世主を拝み倒していたアイシャの上からやっと、ノア王太子の重みが消え、いざ救世主のご尊顔を拝もうと起き上がったアイシャは度肝を抜かれた。
「えっ、えっ、えっ、お母さま!!」
見覚えのある顔が穏やかな笑みを浮かべ、こちらを見ているではないか。
アイシャの頭は大混乱だ。そんな彼女に、さらなる爆弾が投下された。
「あらっ? ルイーザはアイシャに何も話してないのね。ふふふ、初めまして。ルイーザの双子の姉、エルサよ」
(エルサ、エルサ、エルサ……、えぇぇぇ!!)
「お、王妃さまでございますか!?」
「ふふふ、そうよ」
まさかの王妃様の登場に慌てて立ち上がり、カーテシーをとる。
「お、お初にお目にかかります。リンベル伯爵家が長女アイシャと申します。この度は王城へお招きくださり、身に余る名誉、リンベル伯爵家を代表して感謝申し上げます。」
「ふふふ、アイシャ。そんなに畏まらなくて大丈夫よ。ほら楽にして」
優しい王妃さまの言葉に思わず顔を上げれば、目の前にはノア王太子殿下と同じ綺麗な蜂蜜色の髪に藍色の瞳を持つお母さまと同じ顔の女性が立っている。
(信じられない。お母さまって双子だったの。しかも王妃さまって……、有り得ないでしょ)
道理でリンベル伯爵家に来る貴族の面子が凄い事になっていた訳だ。
(そりゃあ王妃様の妹が嫁いだ家なら王家と繋がりを持ちたい貴族がわんさか来るわけよ)
半ば放心状態のアイシャは王妃さまに促され再び席へと戻ったが、その後、聞かされた母と父の馴れ初め話に更に驚かされる事となった。
公爵家出身だった母は、昔から少し破天荒なところがあったという。早々に王家に嫁いだ王妃様とは違い結婚適齢期を過ぎても婚約すら結んでいなかったそうだ。
もちろん公爵家の娘だった母には山のように婚約話が来ていた。しかし、貴族の結婚観に違和感を持っていた母は、その婚約話を尽く断り、無理矢理結ぼうものなら姑息な手段を使い破棄に追い込んだという。
そんな時、王妃様を訪ね度々王城に来た母は、どこで見かけたのか当時まだ執務官をしていた父を見初め猛アタックを開始した。
結婚適齢期を過ぎた娘がやっと結婚する気になったと喜んだ公爵様は、父の意見などお構いなしに外堀を埋め、早々に二人の婚約を結ばせたそうだ。
まぁ、紆余曲折あったが最後はお互いに愛し合い二人は恋愛結婚を果たしましたとさ。
(道理でラブラブバカップルなわけね)
公爵家のお姫様と結婚した父は、あれよあれよと出世して、財務を担当する上級管理職にまでのぼりつめた。
父のシンデレラストーリーは当時だいぶ話題になったらしい。
(だから、あんな噂が広まったのね。どこぞのお姫さまだった母を父が――って)
真相を知ってしまえば納得だ。エイデン王国にただ一つの公爵家のご令嬢と、伯爵家と言っても、底辺に近いリンベル伯爵との結婚話。
まさしく、シンデレラストーリー。
当時、やっかみも含め、噂の的となった父の大変さは想像に難い。
(お父さま……、がんばったわね)
王妃様の話を聞き終えたアイシャは目の前のテーブルに突っ伏したいと、本気で思うほど疲弊していた。
「だからアイシャも気兼ねなく王城に遊びにいらっしゃいね! だってわたくし貴方の叔母ですもの! それにノアは貴方の従兄弟よ~。もっと親しくなっても良いんじゃないかしら♡」
目の前に座る王妃様のニッコリ笑顔がノア王太子殿下の黒い笑みと重なって見える。
(怖っ!!)
「………はは…ははは………」
アイシャは笑って誤魔化すしかなかった。
その時だった。またしても、庭園に響きわったった金切り声に、周りで微笑ましげにアイシャと王妃様の会話を見守っていた侍女の皆さまの緊張感が高まる。
「わたくしの大切なノアお兄様を誑かす性悪女はあなたね!!」
(……はっ?)
王妃様とのお茶の席に転がり込んで来た小さな珍入者に目が点になる。
「クレア!! なぜ貴方がここに!」
王妃様が慌てて立ち上がり、クレアと呼ばれた少女に近づく。
(クレア、クレア、クレア……王女殿下!?)
少女は王妃様の制止も聞かず、ツカツカとアイシャに近づくと、間髪入れずにアイシャの頬を引っ叩いた。
(――――助かったぁぁ)
半泣き状態でノア王太子に押し倒されているアイシャの角度からは、割って入ってくれた神の尊顔は見えない。
しかし、少し高めの綺麗な声から女性だということはわかった。
(誰かは知りませんが、助けて頂き、感謝感激、雨あられでございます)
頭の中で顔もわからぬ救世主を拝み倒していたアイシャの上からやっと、ノア王太子の重みが消え、いざ救世主のご尊顔を拝もうと起き上がったアイシャは度肝を抜かれた。
「えっ、えっ、えっ、お母さま!!」
見覚えのある顔が穏やかな笑みを浮かべ、こちらを見ているではないか。
アイシャの頭は大混乱だ。そんな彼女に、さらなる爆弾が投下された。
「あらっ? ルイーザはアイシャに何も話してないのね。ふふふ、初めまして。ルイーザの双子の姉、エルサよ」
(エルサ、エルサ、エルサ……、えぇぇぇ!!)
「お、王妃さまでございますか!?」
「ふふふ、そうよ」
まさかの王妃様の登場に慌てて立ち上がり、カーテシーをとる。
「お、お初にお目にかかります。リンベル伯爵家が長女アイシャと申します。この度は王城へお招きくださり、身に余る名誉、リンベル伯爵家を代表して感謝申し上げます。」
「ふふふ、アイシャ。そんなに畏まらなくて大丈夫よ。ほら楽にして」
優しい王妃さまの言葉に思わず顔を上げれば、目の前にはノア王太子殿下と同じ綺麗な蜂蜜色の髪に藍色の瞳を持つお母さまと同じ顔の女性が立っている。
(信じられない。お母さまって双子だったの。しかも王妃さまって……、有り得ないでしょ)
道理でリンベル伯爵家に来る貴族の面子が凄い事になっていた訳だ。
(そりゃあ王妃様の妹が嫁いだ家なら王家と繋がりを持ちたい貴族がわんさか来るわけよ)
半ば放心状態のアイシャは王妃さまに促され再び席へと戻ったが、その後、聞かされた母と父の馴れ初め話に更に驚かされる事となった。
公爵家出身だった母は、昔から少し破天荒なところがあったという。早々に王家に嫁いだ王妃様とは違い結婚適齢期を過ぎても婚約すら結んでいなかったそうだ。
もちろん公爵家の娘だった母には山のように婚約話が来ていた。しかし、貴族の結婚観に違和感を持っていた母は、その婚約話を尽く断り、無理矢理結ぼうものなら姑息な手段を使い破棄に追い込んだという。
そんな時、王妃様を訪ね度々王城に来た母は、どこで見かけたのか当時まだ執務官をしていた父を見初め猛アタックを開始した。
結婚適齢期を過ぎた娘がやっと結婚する気になったと喜んだ公爵様は、父の意見などお構いなしに外堀を埋め、早々に二人の婚約を結ばせたそうだ。
まぁ、紆余曲折あったが最後はお互いに愛し合い二人は恋愛結婚を果たしましたとさ。
(道理でラブラブバカップルなわけね)
公爵家のお姫様と結婚した父は、あれよあれよと出世して、財務を担当する上級管理職にまでのぼりつめた。
父のシンデレラストーリーは当時だいぶ話題になったらしい。
(だから、あんな噂が広まったのね。どこぞのお姫さまだった母を父が――って)
真相を知ってしまえば納得だ。エイデン王国にただ一つの公爵家のご令嬢と、伯爵家と言っても、底辺に近いリンベル伯爵との結婚話。
まさしく、シンデレラストーリー。
当時、やっかみも含め、噂の的となった父の大変さは想像に難い。
(お父さま……、がんばったわね)
王妃様の話を聞き終えたアイシャは目の前のテーブルに突っ伏したいと、本気で思うほど疲弊していた。
「だからアイシャも気兼ねなく王城に遊びにいらっしゃいね! だってわたくし貴方の叔母ですもの! それにノアは貴方の従兄弟よ~。もっと親しくなっても良いんじゃないかしら♡」
目の前に座る王妃様のニッコリ笑顔がノア王太子殿下の黒い笑みと重なって見える。
(怖っ!!)
「………はは…ははは………」
アイシャは笑って誤魔化すしかなかった。
その時だった。またしても、庭園に響きわったった金切り声に、周りで微笑ましげにアイシャと王妃様の会話を見守っていた侍女の皆さまの緊張感が高まる。
「わたくしの大切なノアお兄様を誑かす性悪女はあなたね!!」
(……はっ?)
王妃様とのお茶の席に転がり込んで来た小さな珍入者に目が点になる。
「クレア!! なぜ貴方がここに!」
王妃様が慌てて立ち上がり、クレアと呼ばれた少女に近づく。
(クレア、クレア、クレア……王女殿下!?)
少女は王妃様の制止も聞かず、ツカツカとアイシャに近づくと、間髪入れずにアイシャの頬を引っ叩いた。