転生アラサー腐女子はモブですから!?
「――――っ、誰!?」

「この姿で会うのは初めてではないわ。貴方には夢の世界で何度か接触しているもの」

「まさか………………」

 何度も何度も夢で見た真っ白な女性。
 あれが、目の前に立つマリアだとでもいうの?

「わたくし、マリア・リンベルって言うの。貴方の大昔のおばあちゃんね。やだぁ~ポカンってしないで。最後の白き魔女と言った方が、わかるかしら」

 異様にテンションが高い、大人になったマリアに気圧され、とりあえずコクコクと頷いておく。

「百年振りにまともに人と話すから、テンション上がっちゃったわ。まぁ、余り時間もない事だし、サクッと話をしましょ。まずは、この世界が何処かという話ね。簡単に言うと、あの世とこの世の狭間。そして、あの川が三途の川よ」

「――――やっぱり、あの川は三途の川だったのね」

「あら、やだ。気づいてたの?」

「えぇ、まぁ。明らかに現実離れした光景だもの」

「そう。でも、大変だったんだから。アイシャは、目を離すと直ぐにあの川に入ろうとするし。あの川に一歩でも入ってしまったら、元の世界へ戻してあげられなかった。――――貴方は、元の世界へ帰りたい?」

「えっ!? ……元の世界って?」

「そうね。貴方にとっての元の世界は色々あるわね。現代日本も、乙女ゲームに似た世界も、貴方が生きていた世界よね」

「えっ……、マリアさんは、私が日本人だった頃を知っているの?」

「厳密には知らないわ。ただ、あの乙女ゲームに似た世界に、貴方の魂を転生させたのは、私よ」

「どういう事ですか!?」

 マリアさんが私をあの世界に転生させた張本人?

 突然突きつけられた現実に、アイシャの頭に疑問符ばかりが浮かぶ。

 いったい、何のために?

「急にこんな事言われても混乱するわね。ただ、当事者である貴方には知る権利がある。どうして、前世の記憶を持ったまま、この世界へと転生することになったのか? それには、私の過去を話さなければならない。貴方にとっては、見ず知らずの女の過去など興味もないだろうけど、聞いて欲しい。全ては、過去の私のエゴによって引き起こされたことなの」

 頭の中が疑問で一杯になっているアイシャを前に、マリアのもの悲しい過去が明かされる。

 最後の白き魔女だったとアイシャへ明かしたマリアは、あの当時、白き魔女としての力を使えた唯一の魔女だった。生まれた時から桁外れの魔力を有していたマリアは、未来を見通す力『さきよみの力』をも有していた。しかし、彼女はその力を持っていたがために、自分が本当の意味で最期の白き魔女になると知ってしまった。
 
 当時、リンベル伯爵家は白き魔女を生む家として、王家から特別な優遇措置がとられ、それで成り立つような特殊な貴族家だった。もし、白き魔女がマリアの代で(つい)えてしまうと判れば、王家はリンベル伯爵家を見捨てるかもしれない。大切な家族を路頭に迷わせる事になると考えたマリアは、ある計画を実行する事にした。
 
 莫大な魔力を有する白き魔女は、転移魔法を扱う事が出来る。それは、自分の命と引き換えに行う、禁忌の魔法だった。リンベル伯爵家を救うため、いつか白き魔女を復活させるため、マリアは自分の命と引き換えに転移魔法を発動させる事に決めたのだ。

 当時の白き魔女の立場がどのようなものだったかは分からないが、悲しみを瞳に浮かべ無理をして笑う彼女の表情が全てを物語っていた。自分が本当の意味での最後の白き魔女だと知った時、家族を守るため、自分の命を投げ出す決意をするまでに、どれ程の覚悟をマリアはしたのだろうか。

 自分の手で人生を終わらせる決意をしなければならないなんて、想像を絶する恐怖があっただろう。

 目の前に立つマリアの暗く沈んだ表情が、その恐怖を物語っていた。
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