転生アラサー腐女子はモブですから!?
「アイシャの心からリアムを追い出すのは難しい。でも、俺はあきらめない。貴方の心にリアムが住みついていても、アイシャが俺の側にいてくれるならそれで良い。今はそれで構わない。だから、もっと俺に寄りかかれば良い。泣きたければ、泣けばいい。全て受け止めるから……」

 限界だった……
 
 ぎゅっとキースに肩を抱き寄せられ、張りつめていた緊張の糸がプツンっと切れる。頭が真っ白になり、なにも考えられない。

(いいや、もうなにも考えなくていいんだ……、キースに寄りかかったっていい。泣いてもいいんだ……)

「悲しかった。辛かった。苦しかった……、全て忘れてしまいたい……」

「忘れてしまえばいい」

 涙で滲む視界いっぱいに、キースの顔が迫る。

「俺に全て委ねてしまえばいい」

 しゃっくりを上げる吐息ごと、アイシャはキースに唇を奪われていた。深くなるキスに頭の中が真っ白になり、意識が混濁していく。定まらない視界の先、キースが柔らかく笑った気がした。

 それが夢だったのか現実だったのかさえ、わからない。

 翌日、陽の光に包まれた寝室のベッドの上、久々にスッキリ目覚めたアイシャは、昨夜の出来事を思い出し、悶絶することとなる。

(キスしたとこまでしか、記憶がないよぉぉぉぉ……、どんな顔して、キースに会えばいいの!!)

 ベッドに突っ伏しジタバタするアイシャを見て、専属侍女がニヤニヤしていたなんて、まったく余裕のなかったアイシャは気づかない。もちろんナイトレイ侯爵夫人に報告済みだなんてことも。

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