転生アラサー腐女子はモブですから!?
あの日、ルイーザ夫人に伴われ、子息の輪へと挨拶に来たアイシャの印象は最悪だった。ゴージャスな金髪の巻き毛につり目がちな目元、濃い目に施された化粧は、七歳にしては迫力ある美人に仕上がっていた。
大輪の薔薇のような、華やかな印象のアイシャを見て、我がもの顔で振る舞っていた、かつての婚約者候補たちとアイシャの印象が重なり、嫌悪感が増していく。
周りの子息もまた、迫力ある美人に気圧されていたのではなかったか。
和やかな雰囲気をぶち壊して登場したアイシャの存在に、その場の空気が硬いものへと変わる。そんな中、挨拶を述べたアイシャが緊張からか噛んだのだ。
誰もが気づかない振りをしようとした。しかし、その微妙な空気を破り、予想外のアイツが言葉を発した。
まさかリアムが令嬢の失敗を笑うとは思わなかった。奴もまたダニエルと同じく女に全く興味がない。いいや、誰に対しても興味がない奴だ。だからこそ、リアムは興味がない奴ほど、丁寧に紳士的に振る舞う。
その社交辞令的な態度に惑わされる者が後を絶たないが、それを見て内心バカにして遊んでいることは、古い付き合いの僕もダニエルも気づいていた。
そんなリアムが、公衆の面前でパーティーの主役であるアイシャを貶めるなんて信じられなかった。
目の前で唇を噛みしめ怒りで震えるアイシャを立場上、無視することも出来ない。面倒だとは思いつつ、気遣いから名乗り出たわけだが、まさかあの場面で握った手を引っこ抜き、あまつさえ後退する女性がいるとは思わなかった。
放心状態のノアを置き去りに場の状態は変化していき、我に返った時にはアイシャは消えていた。
「不思議な少女……」
ただ興味があるというだけでは収まらない感情が、心の中で渦巻いているのを感じる。
(さて、アイシャとクレアの対決。見ものだな)
アイシャを王城へ招待した事をどこで聞きつけたのか、数日前からクレアは荒れていると報告が上がっていた。今日のお茶会は一波乱あるなと思っていたが、想像通りクレアが乱入してきた時は、思わず笑ってしまった。
甘やかされて育ったクレアは、七歳にもなるのに王族としての自覚もなくワガママし放題だ。気に入らない事があれば手当たり次第に当たり散らし、そのトバッチリで辞めていった侍女も数知れず。
『王族の恥さらし、ワガママ王女クレア』、王城で働く者達の間で、そう噂されているのは知っている。
そんなクレアを矯正するために、やっと重い腰を上げた母でさえ困惑するほどのワガママっぷりだと聞いた。
(まぁ、僕にとっては無害でバカな可愛い妹だから放置しているけど。今後邪魔になれば切り捨てればいいだけの話だ)
そんなバカな妹とアイシャが、今、対峙している。どんな騒動に発展するか、楽しみで仕方ない。
ソファから立ち上がったノアは、サイドテーブルへと近づき、置かれていたポットからお茶をカップに注ぐと、一口のむ。
(そろそろ、クレアが駆け込んでくる頃か)
そう考えていれば、自室をノックする音が聴こえる。ノック音に、わずかな違和感を覚えつつも、入室の許可を出せば、想像した通りの人物がいて、笑みを浮かべる。
(不思議なこともあるものだ。いつもはノックすらしない妹が、ノックをするとは……)
『アイシャとの間に何かあったな』という期待感が増し、さらに笑みが深くなる。
「お兄さま、お話がありますの。よろしいかしら?」
神妙な顔つきのクレアが入ってくる。心なしか頬が赤いように見えるが、何があったのか。
「どうしたんだいクレア?」
「わたくし、アイシャとお兄さまとの結婚なら認めてあげられるかもしれない」
「はっ!? 結婚?」
(クレアは何を言っているんだ?)
それだけを言い捨て部屋を出て行くクレアに、ノアの頭の中は疑問符でいっぱいになる。
(お茶会で何があったんだ?)
今更ながらに、お茶会の席を辞した事を後悔するが後の祭りだ。
(仕方がない。気は進まないが、あの人に聞くしかない)
早る気持ちを抑え、王妃に会うため自室を後にした。
大輪の薔薇のような、華やかな印象のアイシャを見て、我がもの顔で振る舞っていた、かつての婚約者候補たちとアイシャの印象が重なり、嫌悪感が増していく。
周りの子息もまた、迫力ある美人に気圧されていたのではなかったか。
和やかな雰囲気をぶち壊して登場したアイシャの存在に、その場の空気が硬いものへと変わる。そんな中、挨拶を述べたアイシャが緊張からか噛んだのだ。
誰もが気づかない振りをしようとした。しかし、その微妙な空気を破り、予想外のアイツが言葉を発した。
まさかリアムが令嬢の失敗を笑うとは思わなかった。奴もまたダニエルと同じく女に全く興味がない。いいや、誰に対しても興味がない奴だ。だからこそ、リアムは興味がない奴ほど、丁寧に紳士的に振る舞う。
その社交辞令的な態度に惑わされる者が後を絶たないが、それを見て内心バカにして遊んでいることは、古い付き合いの僕もダニエルも気づいていた。
そんなリアムが、公衆の面前でパーティーの主役であるアイシャを貶めるなんて信じられなかった。
目の前で唇を噛みしめ怒りで震えるアイシャを立場上、無視することも出来ない。面倒だとは思いつつ、気遣いから名乗り出たわけだが、まさかあの場面で握った手を引っこ抜き、あまつさえ後退する女性がいるとは思わなかった。
放心状態のノアを置き去りに場の状態は変化していき、我に返った時にはアイシャは消えていた。
「不思議な少女……」
ただ興味があるというだけでは収まらない感情が、心の中で渦巻いているのを感じる。
(さて、アイシャとクレアの対決。見ものだな)
アイシャを王城へ招待した事をどこで聞きつけたのか、数日前からクレアは荒れていると報告が上がっていた。今日のお茶会は一波乱あるなと思っていたが、想像通りクレアが乱入してきた時は、思わず笑ってしまった。
甘やかされて育ったクレアは、七歳にもなるのに王族としての自覚もなくワガママし放題だ。気に入らない事があれば手当たり次第に当たり散らし、そのトバッチリで辞めていった侍女も数知れず。
『王族の恥さらし、ワガママ王女クレア』、王城で働く者達の間で、そう噂されているのは知っている。
そんなクレアを矯正するために、やっと重い腰を上げた母でさえ困惑するほどのワガママっぷりだと聞いた。
(まぁ、僕にとっては無害でバカな可愛い妹だから放置しているけど。今後邪魔になれば切り捨てればいいだけの話だ)
そんなバカな妹とアイシャが、今、対峙している。どんな騒動に発展するか、楽しみで仕方ない。
ソファから立ち上がったノアは、サイドテーブルへと近づき、置かれていたポットからお茶をカップに注ぐと、一口のむ。
(そろそろ、クレアが駆け込んでくる頃か)
そう考えていれば、自室をノックする音が聴こえる。ノック音に、わずかな違和感を覚えつつも、入室の許可を出せば、想像した通りの人物がいて、笑みを浮かべる。
(不思議なこともあるものだ。いつもはノックすらしない妹が、ノックをするとは……)
『アイシャとの間に何かあったな』という期待感が増し、さらに笑みが深くなる。
「お兄さま、お話がありますの。よろしいかしら?」
神妙な顔つきのクレアが入ってくる。心なしか頬が赤いように見えるが、何があったのか。
「どうしたんだいクレア?」
「わたくし、アイシャとお兄さまとの結婚なら認めてあげられるかもしれない」
「はっ!? 結婚?」
(クレアは何を言っているんだ?)
それだけを言い捨て部屋を出て行くクレアに、ノアの頭の中は疑問符でいっぱいになる。
(お茶会で何があったんだ?)
今更ながらに、お茶会の席を辞した事を後悔するが後の祭りだ。
(仕方がない。気は進まないが、あの人に聞くしかない)
早る気持ちを抑え、王妃に会うため自室を後にした。