転生アラサー腐女子はモブですから!?
ダンディ三人組
「ウェスト侯爵さま。お忙しい中、娘の披露目に参加頂き、誠にありがとうございます」
「リンベル伯爵、今日の良き日に招いて頂き感謝する。そちらが、そなたの掌中の珠、アイシャ嬢だね」
父に連れられ向かった先には、赤髪を綺麗に後ろへとなでつけ、豪華な燕尾服を隙なく着こなすダンディーなオジ様が立っていた。
(あぁ、彼が我が国エイデン王国の片翼、知の名門ウェスト侯爵家の当主ね)
エイデン王国の宰相を務める男だ。笑みは浮かべていても、メガネの奥に隠された目は笑っていない。けっして威圧的なオーラーを放っているわけではないのに、その場の空気を一瞬で支配した存在感は、さすがエイデン王国の宰相と言える。
(あの隙のない感じ、いいわぁ)
ダンディなおじ様と言っても、年は三十代そこそこだろう。もちろん、脳内妄想ワールドの住人として、申し分ない。
(逆に、ちょっと渋い感じがいいわよね。年の差恋愛のキャストとして最高。禁断感が増すのよねぇ。しかも銀縁メガネが、良いアクセントになっているわ。貞節な教育者の夜の顔。ダダ漏れる色気に、初心な生徒は……)
『どうした、そんなところに隠れて……
――先生、どうしてここに。
野暮なことを聞くな。君もわかっているのだろう?
えっ! 先生、待って……』
(きゃぁぁ!!!! それ以上はダメよ、ダメ!!)
肌けたシャツの間から差し込まれる骨張った手。小麦色の肌が赤く染まり、それを見た教師が生徒の耳元でささやく。
『君も、期待していたんだろう』と。
(あぁぁぁ、これ以上はダメよ。ダメ……、でも妄想が止まらない!!)
破廉恥な想像が頭の中をクルクルと回る。
(いやいや、今はそれどころじゃないのよ、アイシャ。ここで鼻血を噴かないためにも、煩悩は封印するの。ダンディなオジ様のご尊顔を見ているから妄想が止まらないのよ。目線を下げるの、下げるのよ)
煩悩を抑えるべく下げた顔だったが、ウェスト侯爵からかけられた言葉に顔を上げざる負えなくなる。