転生アラサー腐女子はモブですから!?
赤髪あらわる
練習場を駆け出したアイシャに、もう涙を堪えるすべはなかった。泣きながら走り続け、人気のない宿舎裏の林に逃げ込むと、膝を抱え、声を殺して泣き続けた。
(なによ、なによ、なによぉぉぉ。貴方に言われなくたって自分の実力くらい分かっているわよ! 師匠に迷惑をかけている事も……)
それでも、五年間続けて来たのには、理由があった。
始めは男同士の色んな意味での熱い戦いを見たいという不純な動機だった。しかし、真剣に剣を教えてくれる師匠とのやり取りや、少しずつ上手くなる剣の扱いに、アイシャの考えも変わっていった。
始めは振ることすら出来なかった剣が、毎日の基礎練習と、地道なトレーニングで身体を鍛え続けた結果、徐々に扱えるようになって来たのだ。
そして、『出来た』という小さな喜びと共に、剣を学ぶことで芽生えた新たな将来の展望。
手に職を持ち独立するには、護身術を学ぶ必要がある。伯爵家を出て、ただのアイシャとして生きるには自分の身は自分で守らねばならない。
ここで学ぶ剣が、将来必ず役に立つ時が来る。
アイシャは将来のため、自分の未来をつかむため、辛くとも五年間、剣を握り続けてきた。
その努力を、あの男は切り捨てた。
(許せない。許せない……)
でも、何よりも許せないのは、あの男に全く歯が立たなかった自分自身だ。
あの男の殺気のこもった目に、無様に倒されたまま起き上がることも出来なかった。
(負け犬のままでいいのか!)
アイシャの中の怒りが、闘争心へと切り替わる。
「お前、アイシャなのか?」
突然名前を呼ばれたアイシャは、伏せていた顔を上げる。すると、目の前には赤髪のアイツが夕陽を背に立っていた。
「――――リアムなの?」
「やっぱりアイシャか。お前、こんな人気のない所にいたら危ない! 来い!!」
腕をつかまれ、引き上げられそうになったアイシャは抵抗する。
「やめて! ほっといてよ!! リアムには関係ないでしょ!!!!」
つかまれた腕を離そうと暴れ出したアイシャをリアムが抱き寄せる。
「少し落ち着け」
耳元でささやかれた優しい声にアイシャの力が抜ける。
「お前、泣いて……、どうしたんだ? 何があった?」
アイシャの顔が歪み、止めどなく涙があふれ、こぼれ落ちていく。ヒックヒックと泣き続けるアイシャを抱きしめ、リアムは彼女が落ち着くまで、背を撫で続けた。
(なによ、なによ、なによぉぉぉ。貴方に言われなくたって自分の実力くらい分かっているわよ! 師匠に迷惑をかけている事も……)
それでも、五年間続けて来たのには、理由があった。
始めは男同士の色んな意味での熱い戦いを見たいという不純な動機だった。しかし、真剣に剣を教えてくれる師匠とのやり取りや、少しずつ上手くなる剣の扱いに、アイシャの考えも変わっていった。
始めは振ることすら出来なかった剣が、毎日の基礎練習と、地道なトレーニングで身体を鍛え続けた結果、徐々に扱えるようになって来たのだ。
そして、『出来た』という小さな喜びと共に、剣を学ぶことで芽生えた新たな将来の展望。
手に職を持ち独立するには、護身術を学ぶ必要がある。伯爵家を出て、ただのアイシャとして生きるには自分の身は自分で守らねばならない。
ここで学ぶ剣が、将来必ず役に立つ時が来る。
アイシャは将来のため、自分の未来をつかむため、辛くとも五年間、剣を握り続けてきた。
その努力を、あの男は切り捨てた。
(許せない。許せない……)
でも、何よりも許せないのは、あの男に全く歯が立たなかった自分自身だ。
あの男の殺気のこもった目に、無様に倒されたまま起き上がることも出来なかった。
(負け犬のままでいいのか!)
アイシャの中の怒りが、闘争心へと切り替わる。
「お前、アイシャなのか?」
突然名前を呼ばれたアイシャは、伏せていた顔を上げる。すると、目の前には赤髪のアイツが夕陽を背に立っていた。
「――――リアムなの?」
「やっぱりアイシャか。お前、こんな人気のない所にいたら危ない! 来い!!」
腕をつかまれ、引き上げられそうになったアイシャは抵抗する。
「やめて! ほっといてよ!! リアムには関係ないでしょ!!!!」
つかまれた腕を離そうと暴れ出したアイシャをリアムが抱き寄せる。
「少し落ち着け」
耳元でささやかれた優しい声にアイシャの力が抜ける。
「お前、泣いて……、どうしたんだ? 何があった?」
アイシャの顔が歪み、止めどなく涙があふれ、こぼれ落ちていく。ヒックヒックと泣き続けるアイシャを抱きしめ、リアムは彼女が落ち着くまで、背を撫で続けた。