転生アラサー腐女子はモブですから!?
「――――はははっ、俺はてっきり誰かに襲われたのかと思ったよ。服は泥だらけで髪はボサボサ、……ぷぅ、くくっ、顔も汚れてるしな」

 腹を抱えて笑うリアムをアイシャがジト目で睨む。

「そんなに笑うことないでしょ!! しょうがないじゃない。キースに吹っ飛ばされたんだから!! あぁ、全身痛い……」

 泣き止むまで何も言わず背を撫で続けたリアムにアイシャは、今日の顛末を全て暴露させられた。

「アイシャが、剣を学んでいたことにも驚いたけど、あのキースがねぇ。剣を習いたての、しかも令嬢を容赦なく吹っ飛ばしたことの方が驚きだ」

「そんなこと言ったって、アイツが私を吹っ飛ばしたのは事実よ」

「だよなぁ……、キースは騎士団でも後輩たちに慕われてんだよ。教えを乞われれば丁寧に教えてやってるしな。自分より弱い奴を、理由もなく吹っ飛ばすような奴じゃないんだが? お前、キースの逆鱗に触れるような事、したのか?」

 アイシャの脳裏に脱衣所での事が浮かぶが、たぶん違う。あの憎悪と殺気は本物だった。

「さっき師匠に紹介されたばかりよ! なんで殺気のこもった目で見られて、理不尽なことを言われなきゃならないのか、全くわからないわよ! あぁ、悔しいぃぃぃぃぃ。どうにかアイツをギャフンと言わせたい!」

「はは、それこそ無理だろうなぁ。キースは最年少で部隊長補佐に任命される程の実力者だぞ。剣を習い始めたばかりのひよっこが敵う相手じゃない。まぁ、アイツの剣は正統派だから、姑息な手段をつかえば、運が良ければ当たる可能性もあるがなぁ。ただ、お前じゃ無理だ」

「リアム、確かアイツと幼なじみだったわね? アイツの剣技にも詳しい」

(ニヤリ、獲物を発見!)

「リアム様、わたくしどうしてもキースに勝ちたいの。負け犬のままでは、わたくしの自尊心が傷ついたままだわ。女性の涙を無理矢理見たリアム様は、私のピュアな心まで傷つけた」

 アイシャはリアムの手を握り、引きつった顔の彼の瞳を見つめ一粒涙をこぼす。

「お願いです! わたくしに剣を教えてください」

「いや、俺関係ないだろう。それに、お前ルイス副団長にも教えを乞うているじゃないか。俺にも習うのはマズい」

 引きつった顔のリアムが逃げをうつ。

(逃がさないわよぉ)

「問題ございませんわ! 師匠にはわたくしから伝えます。リアム様にはぜひ、キースを倒す姑息な手段を習いとうございます!」

「あぁ、すでに姑息な手段を使って勝つつもりだし……」

「リアム様は、キースの事を熟知しておられます。アイツを倒すために、ぜひ協力くださいませ」

 アイシャはリアムの胸に飛び込み、上目遣いでお願いしてみた。

「あぁぁぁぁぁぁぁ、分かったからひっつくなぁぁぁ!!!!」

 そしてアイシャは、若干顔が赤いリアムから協力をもぎ取ることに成功したのだった。

(第二の師匠ゲット!)
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