転生アラサー腐女子はモブですから!?
――――かつて、エイデン王国には『魔女』と呼ばれる存在がいた。

 あらゆる力を有し、他者にも力を分け与える事が出来る存在。しかし、その力を使う行為は命を削る行為と同じだった。

 時代の王達は、絶大な力を持つ『魔女』を搾取し、都合良く扱った。その結果『魔女』の絶対数は急激に減っていった。

 それを食い止めようと試行錯誤を繰り返し、多くの魔女を輩出してきたのが、リンベル伯爵家だった。

『白き魔女』とは、魔女を絶やさぬため苦心したリンベル伯爵家を讃え、リンベル伯爵から生まれる魔女にのみつけられた呼称である。

 しかし、多くの『白き魔女』を輩出してきたリンベル伯爵家だったが、魔女の力を有する者を増やすため、近親婚を繰り返した結果、血が濃くなり、子供が産まれにくい状態へと追い込まれた。

 リンベル伯爵家だけでは、子孫を残すことが難しくなり『白き魔女』の存続が危ぶまれる事態に陥ったとき、リンベル伯爵家に手を差し伸べた家があった。

 絶大な権力を有するウェスト侯爵家とナイトレイ侯爵家。

 それぞれの当主と契ったリンベル伯爵家の白き魔女は、三人の子を産む。二人の男児は、それぞれの侯爵家へと養子に出され、女児だけがリンベル伯爵家に残り、この娘が、さきよみの力を持つ『最後の白き魔女』となった。

『古の契約』とは、『最後の白き魔女』と王家、ウェスト侯爵家、そしてナイトレイ侯爵家の三家の間に交わされた密約。

 いずれ、リンベル伯爵家に『白き魔女』が復活する。そう言い残し消えた『最後の白き魔女』の遺言を信じ、三家は『白き魔女』の末裔たるリンベル伯爵家を保護し続けることを誓った。

 その対価としてリンベル伯爵家は、復活した『白き魔女』を二家のいずれかに、嫁がせると約束した。そして、『白き魔女』を護る両翼は、王家に忠誠を誓うと。

 過去、絶滅に瀕した『魔女』を救ったナイトレイ侯爵家とウェスト侯爵家を『白き魔女』の両翼とし、王家を『白き魔女』を保護する立場に置いた四家による密約。

「『古の契約』は、どんなに時が過ぎようとも破棄することは出来ない。『白き魔女』を己の血で生み出してきたリンベル伯爵家だからこそ、『古の契約』を破棄などしない。『白き魔女』の復活はリンベル伯爵家にとっても悲願だろうしな」

「そうですね。三家の保護がなければ『白き魔女』は、あっという間に喰いものにされてしまう」

『白き魔女を迎えし伴侶は、世界の覇者になる』

 あの伝承がある限り、『白き魔女』に平穏は訪れない。

「しかし、お前の時代に『白き魔女』が復活するとはな。リアムがお前の最大のライバルになる。言っている意味はわかるな?」

 キースは、兄の言葉に頷く事しか出来なかった。

(もっと早く、兄上と話していれば何かが変わっていたのだろうか。アイシャとの関係も……)

 苦い後悔だけが残っていた。


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