a Piece of Cake.
手洗い場の鏡を覗こうとする前に、彼が口を開いた。
「助けてくれません?」
「へ?」
一体、何から。
彼が静かに隣へ身を寄せる。
「友人に呼び出されて飲み会に強制参加してるんですけど、帰る理由がなくて。病院の付添いとか言って良いですか?」
腕を示され、言われた。
「はい、そんなことなら」
お安い御用だ。
そうして承ると、彼は「ありがとうございます」と小さく頭を下げて、自分のテーブルへと戻っていった。
わたしも絞られたカーディガンを持ってテーブルに帰れば、湊ちゃんが目をぱちくりさせていた。