a Piece of Cake.

外に出ると、少し肌寒い。
でも、アルコールで火照った身体にはちょうど良い。

店を一歩出れば、すぐ横に、その人は立っていた。

「送ります」
「え」
「窓から友人が見てるんで」

え、と店の窓の方を見ようとすれば止められ、店から離れた。

「……なんか、大変なんですね」

口から零れた言葉。
彼がこちらを見る。

「俺のこと? 自分のこと?」

その質問は正しい。わたしは苦笑しながら「どちらも、かな」と答えた。

「前見た時も女性と話し込んでたので」
「話し……」

彼は納得いかない表情で明後日の方向へ顔を向ける。

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