a Piece of Cake.

「というよりは、こっちが突き放してたんじゃないですか」

はい、仰る通りで。
この前も先程も、女性に絡まれているとしか見えませんでした。

「兄があの顔なんで、店にそれ目的の客が多いんです」
「兄……って、あの人お兄さん?」

厨房の向こうに見えた綺麗なひとを思い出す。

「知らないで店来たんですか」
「ケーキ、美味しかったので……」

正直にあなたを捜していたとも言えず、次の理由を口にした。

本当に、美味しかったから。

それに、お客さんの半数はお兄さんでも、もう半数は彼が目的な気がする。

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