a Piece of Cake.
コックコートと黒いキャップを被る聡現くんが腕を組んで壁に寄りかかり、じとりとこちらを見ている。
「ま、待っていた人の態度じゃない……」
「まあ連絡してこなかった人の前なので」
返す言葉もなく、わたしはカウンター傍へ隠れるように身を寄せた。
「ちょっと、お客様を威圧しない!」
女性店員さんが庇ってくれた。優しい。
「すみませんね、お待たせしました」
眉根を寄せて箱をこちらへ渡してくれる。わたしはそれを受け取った。
「いえ、ありがとうございます」
「ありがとうございました。またお越しください」