a Piece of Cake.

コックコートと黒いキャップを被る聡現くんが腕を組んで壁に寄りかかり、じとりとこちらを見ている。

「ま、待っていた人の態度じゃない……」
「まあ連絡してこなかった人の前なので」

返す言葉もなく、わたしはカウンター傍へ隠れるように身を寄せた。

「ちょっと、お客様を威圧しない!」

女性店員さんが庇ってくれた。優しい。

「すみませんね、お待たせしました」

眉根を寄せて箱をこちらへ渡してくれる。わたしはそれを受け取った。

「いえ、ありがとうございます」
「ありがとうございました。またお越しください」

< 42 / 135 >

この作品をシェア

pagetop