1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

3、旦那さまが急に甘くなった


 アリアはふと思った。
 このままフィリクスを除いて義両親と3人で暮らしてもいいかもしれない。


 幼少期から散々、実の両親に冷たくされてきたアリアには、義両親の優しさが身に沁みた。
 こんなに与えてくれることなど、アリアの人生にはないと思っていた。
 甘やかされる喜びを、初めて知った。

 兄も妹もこんなふうに両親に甘やかされてきたのだろう。
 なるほど、これなら自堕落になるはずだ、とも思った。


 結婚当初、離婚したあとは自立してひとりで自由に生きるんだと粋がっていたが、この甘々な生活を体験すると離れがたくなる。


「いい人たちだけど、仕方ないよね」
 とアリアは自分に言い聞かせるように言う。

 だって肝心な夫がよその女を追いかけているのだから。
 しかも、離婚後はその女と再婚するだろうし、当たり前だが前妻の居場所などない。

 余計なことは考えず、今だけを楽しんでおこうと思った。



 ところが、それからひと月ほど経った頃。
 思いもよらないことが起こった。


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