1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

「アリア、今日から一緒に寝ないか?」
「はっ!?」

 突然、夫のフィリクスから寝室をともにしようと言われたのだ。
 仰天したアリアは思わず聞き返した。


「ええっと……旦那さま、今なんて?」
「一緒に寝ようと言っているんだ」
「え? ちょっと何言ってるかわかんない」

 アリアは驚きすぎて、つい素の面が出てしまった。
 一方、フィリクスはそのことに気づかず、頬を赤くして照れている。


「い、いや……僕たちはほら、一応夫婦だから。その……夫婦としての営みなどを」
「いやいや、あなた私のこと好きじゃないですよね?」
「そ、それは……」
「他に好きな人がいるのでしょう?」
「まあ、そうなのだが……」

 もごもごと話すフィリクスに、アリアは呆れたような少々可愛いような、複雑な感情を抱いた。


「私たちは偽りの夫婦ですよ。営みは必要ありません。それとも何ですか、お相手の女性との行為に不満でもあって私で試してみようなどとお考えでしょうか?」
「そ、そんなことはない! 僕はまだ一度もそのような行為をしたことはないんだ!」
「へっ!?」

 突然の告白にアリアは言葉を失った。


 これはどう反応したらいいのだろうか。
 愛人とそういう関係になっていないということに突っ込むべきか、あるいは今までの人生でそういった行為をいたしたことがないということに突っ込むべきか。

 な、悩む……。


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