1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

 華やかなパーティ会場に訪れた貴族たちの中で、ひときわ目立つ新婚夫婦がいた。
 それは、フィリクスとアリアだ。

「まあ、アトラーシュ侯爵と夫人だわ」
「侯爵は平民の女に溺れていると聞いたけど」
「しっ……! そのことを口にしてはいけないわよ」


 予想はしていたが、やはりフィリクスの噂で持ちきりである。
 この噂を払拭するためにフィリクスはアリアと仲良し夫婦を演じようというのだろう。
 どうせ1年経ったらバレるというのに。


 ふたりは仲良く腕を組んで貴族たちに挨拶を交わした。
 その後、仕事の話で盛り上がるフィリクスから離れたアリアはひとり、会場の隅っこで料理を堪能した。

 あとは美味しいものを食べて気楽に過ごしていればいいわ。
 そんなふうに考えていたところ、次々と貴婦人たちが近づいてきたのである。


「侯爵夫人にご挨拶申し上げますわ」
「夫人は侯爵さまと仲がよろしいのですね」
「本当に、噂とは適当なものですわね」
「あら、わたくしは噂など気にもしておりませんわよ」

 アリアは笑顔で対応しながら、複雑な胸中だった。
 それでも、みんなの反応はそれほど悪いものでもないことに安堵した。
 平民の女にうつつを抜かす侯爵に見捨てられた夫人という立場は、やはり気分のいいものではない。


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