幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。
ちなみにこいつの装いは、海外出張先で店を紹介されて買ったとかいう、オーダーメイドのスーツだ。素人目で見ても既製品とは違う高級感を醸し出しているそれを、何気ない様子で着こなしているのは、さすがと言うべきか。
「あれっ、原田」
「ほんとだ。久しぶりだね原田くん」
近づいてくる倫之に気づいてか、振り返った何人かがそんなふうに挨拶してきた。女性の中には、あからさまに目を光らせた人もいる気がする。スーツの仕立ての良さに気づいたのかもしれない。
「久しぶり。皆、元気そうで良かった」
「そう言うお前もな。聞いたぞ、もうすぐ課長になるかもしれないって?」
「えっそうなの? いつ」
「来年かな。営業担当の常務が今年度で退職するらしいから、順繰りに上がってくことになると思う」
「だとしたって、凄いじゃない」
「そうだよ。うちのクラスじゃ一番出世が早いんじゃないか」
「後で詳しく話、聞かせてよ。……ところで後ろの人、誰?」
前のめりな勢いで倫之に話しかけていた女性が、いま気づきましたというふうに、私を見て言った。