Beautiful moon
プロローク
霞みがかった意識がゆっくりと覚醒し、重い瞼をこじ開ければ、そこには見慣れない焦げ茶色の天井。

横になったままにも関わらず、鈍く痛む頭が、昨夜のアルコール摂取量を示していた。

比較的お酒には強い、自身のキャパシティーを軽く超えてしまった自覚はある。


”…今、何時だろう?”


薄く軽い真っ白な掛布団の中で緩く身じろぎしようとして、その時初めて自分が何も身に着けていないことに気付くと、思わず自嘲してしまう。

私としたことが、あのまま下着も身に着けず、眠ってしまったとは…。

幸い動かした足先がそれにあたり、器用に手繰り寄せては身に着ける。

ベットサイドのデジタル式の置き時計が、午前5時半を指し示していた。

重く気怠い身体の上半身を起こし、まだ薄暗い部屋の周りを見渡すと、ベットの脇に落ちていたホテルの備え付けバスローブを見つけ、隣で寝ている”彼”を起こさないよう、拾い上げて羽織ると、そっとベットから抜け出した。

『寒…』

昨夜、度を越したアルコールの量で互いに体温が上昇していたせいか、触れ合う度に熱が増し、いつの間にか室内の温度設定を下げてしまっていたようだ。

壁際に備え付けられていた、調整パネルを操作し、通常より3~4度低くなっていた設定を通常温度に戻すと、狭い部屋の一辺に設けられた備え付けのデスク前の椅子に腰を下ろす。

椅子の上で片膝を立て両腕で抱え込むと、その薄闇の中で、部屋の大半を埋め尽くしているキングサイズのダブルベットで、今もまだ起きる気配のない男性をじっと眺めた。

昨夜、何度も身体を交えた相手。


”目が覚めたら昨夜の記憶が無く、いつ入ったかわからないラグジュアリーなホテルの部屋で、見知らぬイケメン男性と一夜を共にして…”


なんて、親友が嵌っている、恋愛ゲームの中での王道のシチュエーションがあったっけ?

そんな甘い設定とかけ離れ過ぎた今の状況に、自然と失笑がこぼれ出てしまう。
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