Beautiful moon
『あの時透に飲ませたお店のオリジナルカクテル、アレ相当アルコール度数高かったの、あなた初めから知ってたのよね?』

月光をバックに、両腕を抱えた美月さんが妖艶に立ち尽くし、呆れたように微笑む。


『…ホント、あざとい女ね』


美しくも儚いその姿を、足元から覆い隠すように、またゆっくりと靄が立ち込め始めた。

いよいよ時間が来たようだ。

もう今までのように、この夢の中には戻ってこられない。

そう確信すれば、最後に彼女に聞いておきたいことがあった。

『美月さん』
『ん?』
『最後に一つだけ』

薄っすらと白いベールに包まれていく美月さんに問いかける。

『どうして私だったの?』

薄く消えていく彼女に投げかけた最後の質問に、美月さんは何も答えず、ただ黙って美しい笑みを浮かべる。

やがて彼女の姿も、すべてが濃く白く包まれ見えなくなったとき、唐突に足元がすっぽりと抜け落ち、身体ごと一気に落下していく。

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