「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 なんとなく気分で言った酒場での冗談も、自分のせいだから責任を取ろうとまで言ってくれる人なのに。連絡ひとつもなく。

 絶対におかしい。

「……あ。ごめん。うわ。やばい……薄着の妻の破壊力を、今まで知らなかったから……暑いもんね。ごめん。一瞬、何をしに来たとかの要件を全部忘れた。もう……フィオナが着替えるのを、おとなしく待つんだったよ……」

 シリルが顔を赤くして、もごもごしていると思ったら、妻のネグリジュ姿を初めて見たからだったらしい。

 照れた顔は可愛いけど、彼の要件が私の予想通りなら今はそんなことを言っている場合でもない。

「もうっ……! それは、良いから。シリル。何があったの……?」

 私が早く要件を言ってと急かすようにそう言うと、シリルは急に真面目な顔になり、うんと大きく頷いてから話し出した。

「フィオナ。三日前に君と会ったあとから、ルーンの姿が見えなくなった。俺も今日聞いて心当たりをほうぼう探したけど、やっぱりどこにも居ない。職場の魔塔はもうすぐ辞める契約ではあるけど、まだ契約期間は残っている。ふらりと旅に出るのは、時期がおかしい。あいつから、何か聞いてる?」
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