「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「けど、あのルーンの魔力は尋常じゃない。歴代でも一番の数値だって聞くし。もし、ベアトリスが結界を張られる前に勘づけば、絶対に中に入ることはないだろうし……ベアトリスは、三日前から確かに神殿からは出ていない。だから、どうしても……おかしいんだ」

「……ルーンさん。そんな……」

 私は心の中にわき上がるような暗い不安のあまり胸の前で、手を組んだ。

 ルーンさんがいきなり居なくなるなんて、普通なら考えられないならば、私たちの予想外な普通ではない何かが起きているということだから……。

「うん……ごめん。こんな深刻な話をしている時に、本当に悪いんだけど……」

「? シリル。どうしたの?」

 さっきまで大真面目な顔をして話していたシリルは、目のあたりをおおって言いにくそうにして言った。

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