「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。

16 卑劣

 行方不明になってしまったルーンさんの行き先を、今まで徹夜で探していたらしいシリルだけど、今日は彼が考案した作戦の模擬があるとかでとりあえず行ってくると仕事へと出かけて行った。

 ルーンさんは確かに心配だけど、魔王討伐を共に果たしたほどに強い彼ならきっと大丈夫だろうと、彼を信頼しているシリルは思っているのかもしれない。

 けど、私はルーンさんのことが心配で、居ても立ってもいられなかった。

 彼を知る関係者は、心あたりを探しているらしい。

 けど、事件性は今はなくて、身代金目的の誘拐の線も薄いとなれば、国の機関は動かない。やみくもに探しても、意味はないことはわかってはいるけど……それでも、何かとお世話になった彼のために何かしたかった。

 私はとにかく大きな邸の中で、ただ一人安穏として残っていることに耐えられなくなった。

 外出着へと着替えて、前に話していた時にルーンさんが住んでいると聞いた彼の家にまで向かった。

 どんなにかすかな手がかりでも良いから、どうにかして彼に近づきたかった。

「とはいえ……居るはずもないわよね。ここは一番に探しているはずだもの」

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