「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 美しいジャスティナのように、誰かに認められたいのにどうしてと、かわいそうな自分をあわれんでいた時間を取り戻したい。今思えば、それにはなんの意味もなかった。

 使用人の管理は、私の仕事だったんだから。たとえシリルが自身の輝かしい功績によって高い爵位を叙爵された公爵だとしても、私は元々生まれながらの貴族で……それなのに。

「……ルーンさん!」

 背の高い人が座って何とか体が入り切るサイズの光る透明な三角すいの中に、私が探していた彼は居た。

 今まででは考えられないくらいに衰弱している様子のルーンさんに、私はエミリオ・ヴェルデに取られていた腕を振りほどいて駆け寄った。

「くそ……俺のせいか。悪い。フィオナ。結界張られて、出られないんだ。どうにかして、シリルのところに帰れ。俺は一人だとしても、大丈夫だから。ベアトリスに俺は殺されない」

 殺されないとキッパリと言い切ったルーンさん。なぜ聖女の名前がここで出てくるかなんて、それはもうどうでも良くて。

「ルーンさん……そんな……けど、そんなに衰弱して……」

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