「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 思わず声が、ふるえてしまった。私のせいで、こんなことになってしまうなんて。

 近くで見たルーンさんの顔は、今にも倒れそうだと思うほどに青い。もしかして、閉じ込められる以外にも何かされている?

「そういう条件の結界なんだ……今もベアトリスに、俺の魔力吸われてる。あいつ……国を守る結界に使っている魔力を一部使ってるんだ。だから、この結界を俺が壊せば、国を守っている守護結界にほころびが出来る。そうすれば、強い魔物が入り込む」

「そんな……」

 青い顔をしたルーンさんは淡々とそう言って、強い魔力を持つ彼が結界を、無理やり破壊せずにここに留まっている理由を知った。

「どうだ。フィオナ……瀕死の魔法使いの生死は、お前の決断に掛かっている」

 私はここに連れて来た何もかもの元凶を、にらみつけた。こんなことをするなんて、信じられない。

「何を言い出す。フィオナに手を出すな……俺とシリルを敵に回すのか? 地獄の果てまで、追い掛けるぞ」

 けわしい顔になったルーンさんの言葉を無視して、明るい笑顔を浮かべたエミリオ・ヴェルデは言った。

< 121 / 192 >

この作品をシェア

pagetop