「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「君はシリル・ロッソに暴力を受けていたことを訴え、肉体関係のない白い結婚を主張して離婚するんだ……何。僕がすべて、筋書きも用意した。何もかも指示通りにすれば、間違いはないさ」

「……シリルを、巻き込まないで。もし、離婚するなら白い結婚だけで十分でしょう。貴方は私の使用人を何人も買収しているようだから、複数の証言者と私本人の主張で足りるはずよ」

 私の夫のシリルは、本当に優しい人だ。わかりやすい嘘だとしても、そんな汚名を着せる訳にはいかない。

「そうかな? 別に良いよ。君が僕の言う通りにすると言うのなら……だが、その後、すぐに結婚してもらうよ。言っておくが、僕はフィオナと結婚したら絶対に離婚しない。求婚権をめぐって決闘を挑まれても受けない。だから、君は死ぬまで僕のものだ」

「フィオナ! 俺を見捨てろ。こいつらは絶対に俺を殺すことは出来ない。良いから。早く逃げるんだ」

 狭い空間に閉じ込められたルーンさんは必死に訴えてくれるけれど、今まで彼が私に向けてしてくれたことを思い返せば、そんなことが出来るはずもなかった。

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