「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「シリル……シリルっ!! こわかった。こわかった!!」

 目を開ければやっぱりそこに居たシリルもぎゅうっと抱きしめてくれて、落ち着かせるように背中を何度も撫でてくれた。

「フィオナ。ごめんね。怖い思いをさせて。何もかも、俺のせいだ。ヴェルデ家とベアトリスには王に言って、厳罰を与えてもらうようにするよ……かわいそうに、フィオナ。こんなに泣いて。辛かったんだね」

 彼は私の頬に大きな手を当てて、難しい表情をしてそう言った。

「シリル。私、絶対に別れたくないっ」

 これまで私は、ずっとシリルに対して遠慮がちだったと思う。

 なぜかというと、やっぱりベアトリス様から逃げるという目的でもなければ、こんな私となんて彼は結婚してもらえないだろうと思っていた。

 けれど、シリルと別れなければならないという、絶体絶命の危機に直面して自分が彼のことがどんなに大切でどんなに好きかを、本当の意味で理解することが出来た。

 絶対に、彼と別れたくない。どんなに美人でもどんな素晴らしいものを持っている人でも、私は負け戦だとしても挑んで……シリルを誰にも渡したくないんだって。

「え? 何の話なの。俺もフィオナが好きだし、絶対別れたくないよ!」

 そう言って顔を近づけたシリルは、私の顎を持って可愛いキスをくれた。
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