「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「ああ。間違いないな。彼女の父親は、ヴィオレ伯爵と仲の悪いノワール伯爵だろう。シリル。良かったな。あまりに上手く行きすぎて、腑に落ちない部分も多いが、これでお前もベアトリスから逃げ切ることが出来るぞ」

「うわー……なんか、結構酔ってたから、勢いで変なこと仕出かしたのは、認めるけど、そんな俺に幸運の女神が舞い降りた……この世界の全てに、感謝するわ」

 そう言ってシリルは天を仰ぎ、神に祈りを捧げるように両手を組んだ。

「あの……? ベアトリスって、あの……もしかして、聖女様のことですか?」

 ベアトリス・ヴィオレはヴィオレ伯爵家に生まれた時に、教会から聖女誕生の宣託を受け、教会で育ったから私は彼女に会ったことは一度もない。けれど、噂ではよくその名前を聞いたから、彼女は聖女で勇者ご一行の一人であることは、間違いないはずだった。

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