「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。

20 約束

「……国全体の守護結界を、一回外す? この後を考えなくて良いなら、シリルなら全力で一分あったらいけるだろ?」

「いや。ここで俺がベアトリスの代わりに結界を張るのを止めたら、この国がまず滅びるけど……大丈夫?」

 二人ともそんな訳にはいかないだろうとわかりつつ話し合っているのか、微妙な表情でへらっと微笑み合った。

 待って……待って! もうすぐ国が滅亡しそうなのに……二人とも余裕でこんなにも落ち着いてるの?

「んー……地下で倒れているベアトリスも、シリルの攻撃を防ぐのに防御特化の結界張るだけで精一杯だったみたいだからな……多分。起こしても無駄だなー」

「一応は女の子だから、手加減はしたよ?」

「ははは。一応な。一応……確かに、他の地下室に転がってる奴らよりかはマシだったな」

「まっ……待って! 二人とも、なんでそんなに……動じてないの?」

 私は我慢し切れずに、聞いてしまった。二人には焦った様子もなく、ただただ現状を語り合っているだけなのに。

 一人だけ慌てている私の言葉を聞いて二人は目を合わせて、同時にため息をついた。

「……もう、これは仕方ないよな? ルーン。一人を召喚するならいける? 俺も余っている魔力を、そっちに回せないこともない」

「なんとか……あれが片付かないと関わらない約束なのに、気が引けるけど……これは緊急事態だし、仕方ない。これはもう。うん」

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