「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 ぽかんとした私が彼の答えを聞く前に、魔法陣の真ん中に難しい表情を浮かべた長身の男性が立っていた。

 彼は短い赤い髪に、金色の目。背中にあるのは、背丈の半分ほどもある大剣。

 私の夫のシリルは王子様と言っても不思議ではない容姿だけど、この人は対照的に鋭い目つきに精悍で危険な悪っぽい雰囲気を漂わせている美形だった。

「……やあ。ライリー」

 シリルがにこにことして手を振って微笑めば、ライリーと呼ばれた彼は難しい顔をして確認するように言った。

「ベアトリスの件は、片付いたか?」

「……いや、実はまだ……」

 真っ先に気になる様子の彼に言いにくそうにシリルが言えば、男性三人の中に気まずい沈黙が落ちた。

「……何やってんだよ! 俺が旅の間、ベアトリスにどれだけ苦労したと思ってるんだよ!」

 ライリーさんはイライラとした様子でそう言えば、ルーンさんははあっと大きなため息をついて言った。

「あの旅の間、一番負担を掛けたライリーには悪かったと俺たちだって思ってるよ。だから、命の危険が迫る今まで、お前を呼ばなかったじゃないか」

「……命の危険?」

「上空見てよ」

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