「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「……フィオナ! ああ。フィオナ、無事で良かったわ。怪我もなくて、本当に良かった」

 しみじみとそう言って嬉し涙を浮かべるジャスティナの柔らかい体を抱きしめて、私は彼女がどれだけ私のことを心配してくれていたのかを知った。

「ジャスティナ……ありがとう。貴女がシリルを呼んで来てくれたんでしょう? あの時にシリルが来てくれなかったら、私……」

 それを思えば、本当にゾッとした。

 あの時にエミリオ・ヴェルデの思惑通りにすぐにシリルと離婚させられて、彼と結婚させられたとする。

 そんな彼は私と前夫となるはずだったシリルを、絶対に会わせたくはないはずだ。

 ヴェルデ家の妻となった私が療養だと称して姿を消していれば、王にも家族にも手は出せなくなる。そんな風に無理やり結婚させられて幽閉のようになってしまう話は、嘆かわしいけどいくつか耳にしたこともあった。

 心配する家族は誰が書いたかわからない手紙を見せられ生きている証拠だと言われ、どこかに閉じ込められた私は生きているか死んでいるかもわからない存在になってしまうだろう。

 彼女のおかげで、それを回避することが出来た。

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