「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 初対面のベアトリスは、これから長い旅を共にすることになる三人の顔をしげしげと見つめた後「ルーンさんは、私の好みじゃないわ。ライリーさんは、恋人にするなら良いわね。結婚するなら絶対にシリルさんだわ」と言ったので、俺たち三人はこの時全員同じことを考えたと思う。

『何言ってんだ。この女』

 それからの一年半に及ぶ魔王討伐の旅は、苦難の連続だった。主に被害担当だったのは、俺とライリー。

 誤解をおそれずに正直に言ってしまえば、回復担当の聖女がまともに仕事してくれない。だから、前衛に出るライリーと俺は文字通りに彼女のご機嫌は死活問題だった。

 わがままなベアトリスのご機嫌を損ねないように、なだめすかしてお願いして、なんとか強いモンスターを倒し終え思ったら、こんなところで寝られないと良くわからないことで泣き出す。

 そこでしかめっ面の魔法使いルーンがベアトリスだけ連れて、遠方の街の宿屋へと何度か移動魔法を繰り返して移動する。俺とライリーは、心底疲れた顔で黙って野営する。そして、次の日もベアトリス合わせで昼頃の出発になる。

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