「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。

24 酒場(Side Ciryl)

「さすがに俺も、これは同情せざるを得ない……どうする?」

「どうするって、俺が判断出来ないよな? ……まじかよ」

 こういう事態を大抵は面白がっているのに、珍しく気の毒そうな顔をしているルーンを見て、俺は頭を抱えて机の上に額を付けた。

 ざわざわとした酒場の喧噪が聞こえなくなるくらいに、ルーンの言葉への驚きが勝っていた。

 産まれた時から聖女として育てられたベアトリスは、比喩でもなんでもなくて、この世のすべてのことが自分の思い通りになると思って生きている。

 多くの国民を守る国中を守る守護結界を展開するのは幼い頃から彼女の役目だし、平たく言うと国民総動員で聖女たる彼女を甘やかした挙げ句に、えらいことになってしまった。

 この俺は魔王復活時に、神の宣告を受け勇者となった。

 それまでにもある程度の手応えが感じていたし時期的にそうなるなら、おそらく俺が勇者だろうなと自分でも思っていたので、実のところ選ばれたことに関してあまり驚きはなかった。

 剣聖も魔法使いも、順当な人選だ。

 魔王討伐が役目の勇者ご一行に選ばれるほどの高い能力を持つ人間なら、大体はそれまでに世界でも有名になっている。ライリーもルーンも名前は聞いたことがあったので、王宮に集められた時に顔合わせして名前を聞いてもこいつだったか程度。

 問題は、聖女のベアトリスだ。

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