「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 貴族の訪問に相応しい服装を着て多額のお金を手にし、シリル・ロッソは我がノワール伯爵家へとやって来た。

 私も両親を前にした彼の会話で、シリルの持つ爵位を初めて知ったんだけどなんと通常なら王族の血に連なる者に与えられる公爵位だった。

 世界を救ってくれた勇者なのだから、そのくらいの報酬は妥当だということなのだろうか。

 だから、シリルは若きロッソ公爵として私に求婚しにやって来たという訳だった。

 彼の顔を知っていたというお父様は、シリルが現れた時から終始歓迎している様子で、とにかく今日にでも結婚証明書を提出した後に、すぐに同居したいという彼の意向も「娘がそれで良いのなら」とすんなりと受け入れた。

 お母様も今まで噂でしか聞いたことのない勇者の訪れに最初は驚いてはいたけど、彼が持つ高い身分や私の結婚準備費用にとシリルが用意してくれた金額を聞くと、あからさまに好意的になっていた。

 本当に、現金なんだから。

 普通なら貴族が結婚する時は婚約した後で公示期間が必要なんだけど、そこもお父様とシリルが協力し、力技で何とかしてしまえたらしい。

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