「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 そんなこんなで、その日の内に私たちは結婚証明書を提出し、私はシリルが急遽購入したという邸の中に三日後には立っていた。

「……どう? ここは急遽用意したんだけど、良かったら、フィオナの好きなように改装してくれ。もし、気に入らないなら、建て替えても構わない。費用なら、気にしなくても良い」

 シリルはここ数日結婚のために走り回っていたはずなんだけど、そんな様子など感じさせない涼しい顔をしてそう言った。

「いえ。十分ですわ……とても素敵で……」

 シリルが魔王討伐の報酬で購入した邸は私が今まで住んでいたノワール伯爵家より、段違いに格上だった。

 文句の付けようなんて、何もないくらい。こんな私がこんなに素敵な邸に住めるなんて、信じられない。

「俺の事情で、先に籍を入れることになったけど、結婚式はゆっくり準備してから半年後くらいにしよう。フィオナのドレスだって注文しないといけないから……」

「あのっ……私。結婚式なんて、大丈夫です」

 もし、彼と豪華な結婚式をすれば、お父様の仕事関係や親戚周り……私の友人たちも、呼ばなければいけなくなる。

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