「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 そうなると、皆こう口に出さずに思ってしまうはずだ。何故、あんなにも素敵な勇者の隣には、何の長所もなさそうな子が居るのだと。

「……え? それはどうしてだか、訳を聞いても?」

 私の結婚式への否定的な意見を聞いて、シリルは不思議そうだ。

 すべての女の子は結婚式に憧れを抱いていると、彼は思っているのかもしれない。私も……前は確かにそうだった。

「あの……私。注目されるのが、あんまり好きではなくて……」

 私が背の高い彼を見上げてそう言うと、シリルはそんな子どものワガママのような意見を聞いても優しい眼差しだった。

 きっと、外見だけではなく中身だって素晴らしい、とても良い人なのだ。こんな私には、本当に勿体ないくらいに。

「そうか……では、式は二人きりでしようか。お互いに気心の知れた友人だけを招待しても良いし……そんなに憂鬱そうな表情を、しなくても良い。俺は元々の貴族ではないから、少々の奇行は許して貰えるさ。世界だって救ってるし」

 そう言ってもらえて安心して私がホッと大きく息をついたので、シリルはやはり不思議そうに首を傾げた。
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