「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。

04 仮面

 新居にやって来た日、私は自分の寝室で深夜まで眠れなかった。

 別に興奮して、目が冴えて眠れなかっただけではない。

 普通、誰かと結婚すると言ったら、そういった肉体関係だって込みであることが前提だと思う。

 私だって、当たり前のようにそう思っていた。

 けれど、夫になったシリルはその晩、寝室の戸を叩くことはなかった。待ち疲れた私はいつの間にか、ベッドで寝てしまっていた。

 朝食の時間だと新しく雇ったメイドに起こされ、準備をして食卓に付けばシリルは既に朝食を食べていて、私を見てにこっと微笑んだ。

「おはよう。フィオナ。良く眠れた?」

 いいえ。夫になった貴方を起きて待っていなければと思っていたので、全く。

 なんて言えるはずもなく、私は力なく微笑んだ。

「おはようございます。シリル……あの、その服は?」

 私は彼が着ている服を見て、不思議に思った。シリルは元々冒険者をしていた庶民で、勇者の宣託を受けて魔王討伐を果たした。

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