「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「いえ。その……私たち、まだ夜を過ごしてないんです……けど、夜会でベアトリスさんに言われてキスをすることになって、その後に夫婦なんだからいずれするから良いよねって、言われたんです」

「ベアトリスが? あいつ。本当に、見境なしな行動になってるな……それは、良いか。うん。それで?」

 話を先へと促したルーンさんは、真剣な眼差しだ。私の緊張が、彼にも移ったのかもしれない。

「……あのっ……いずれするのに、今キスをしないのは、何故だと思いますか? 私たち、すでに夫婦ですよね?」

「多分……理由は、結婚式じゃね?」

 私はルーンさんがこともなげに言った言葉を聞いて、口を押さえた。そうか。結婚式での誓いのキスのことを、忘れてた。

「あ。確かにそうですね」

 彼の言葉に納得した私が頷くと、ルーンさんは軽く息をついてから微笑んだ。

「そうそう。良かったじゃん。すごく大事にされててさ。同じ家に住んでて我慢するって、なかなか出来ないよ」

 確かに、そうよね。

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