「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「……そうだ。フィオナに、俺が勇者だという証拠を見せてあげるよ。勇者だ勇者だと周囲が言っていたとしても、もしかしたら良く似ている偽物かもしれないだろ?」

 空気を和ませようとしてかおどけたように言ったので、私は思わず笑って言った。

「ふふふっ! そうですね。もしかしたら、良く似た偽物なのかも」

「そう。だから、これが証拠だよ」

 彼は何気なく空に右腕を伸ばして、そしてその場所に現れたものに、私は息を呑んだ。

 広い空に描かれるようにして、大きな白い竜が現れたからだ。それは、生身ではなく実体を持たない、風を形作る魔法のようだった。

「……すごい」

 何を今更と誰かに言われてしまいそうなんだけど、その時に私は人好きのする柔らかな印象を持つシリルが、本当に世界最強の勇者なんだとそう実感した。

 だって、絶対的な強者のまとう、圧倒的な空気。それを、目の前の光景から肌にビリビリと感じていた。

 シリルは……彼以上に強い者がないと言われる、勇者なんだ。

「乗ることも出来るよ? フィオナは、高いところは平気?」

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