「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 どうしてもジャスティナに、シリルを取られたくない。

「……あんた。俺の前で、いつも泣いてるけど……その」

 隣に座ったルーンさんはこの前に持っていなかった反省を踏まえてか、泣き出した私にハンカチをそっと渡してくれた。優しい。

「ごめんなさいっ……けど、ルーンさん、いつもっ……泣きたい時に、居るからっ……」

 上手く声が出ない私を見たルーンさんは難しい表情をした後に、はあっと息をついた。

「今度は何」

「私……この前に言っていた親友が、今家に来てて」

 この状況をどう説明しようか、迷った。言葉を止めた私を不思議そうに見て、ルーンさんは言った。

「じゃあ……なんで、こんなところに居るの? あんた訪ねて来たんだろ?」

「私ではなく……シリルに、用があるんです」

「……はー、なるほどね。ご自慢の親友に会ったシリルの反応を見たくなくて、ここに逃げてきたんだな。あんたって……本当に、馬鹿だね」

「そんなの……わかっています」

 あきれたような言いようを聞いても、その通りだと思うだけだ。

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