「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 私の言葉を最後まで聞く前に、彼は大きな声で言った。けど、別に怖くはなかった。その声に、救いを求めるような切実なものが込められていたからかもしれない。

「えっと……その……そうです。もし、私で良かったら……」

 私はここで彼になんて言えば良いか、わからなくなった。

 親友のジャスティナと憧れのエミリオ様が楽しそうに談笑(だんしょう)しているのを見て、ほんの少し前に私みたいな人と結婚してくれるなら、誰でも良いとまで絶望していた。

 そうなんだけど……でも、なんだか、これって……。

「嬉しいです! ご応募、ありがとうございます! 俺と、ぜひ結婚しましょう!!」

 明るく笑った彼は私の両手をぎゅっと握って、とても嬉しそうにそう言った。
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