冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

なすべきこと

 母と父の夢から覚めた後も、セシリーは憂鬱な気分を持て余していた。

 父はセシリーの話も聞かず、外出しないようきつく言いつけると早々に仕事へと出ていってしまったため……本日も家でだらけた日々を過ごすしかないのかと思うと、どんどん気分は沈み込む。

 思えば、騎士団で送っていた毎日のなんと忙しかったことか。毎朝五時過ぎには支度を整え家を出て、ロージーと共にひっきりなしに働いていた。

 本部館内の清掃、食事の提供、帰ってきた洗濯物の仕分け、備品の管理や制服の繕い等々、請われればなんでもやった。目の回るような気忙しい日々だったけれど……仕事を終え、夕陽を見ながら帰路につく時間は、セシリーに確かな充実感をもたらすものだった。

「……つまんないんだよぉ。ひとりだと」

 今日もテーブルの上にべちゃっと貼り付き、自分のできることを考えてみるものの、まったくと言っていいほど思いつかない。エイラたちに頼み込み、家の仕事でも手伝わせてもらおうかとも思うが、下手をすれば彼女たちの仕事を奪い困らせてしまうだけだ。
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