冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「それはお待ちいただきたいですな。もちろん取り決めは承知……ですが彼も今回のことには当事者であり、この場に列席する権利は十分にあると考えます」
「それは……どういうことですか?」
「では、彼自身の口からその理由を語っていただきましょう。リュアン殿……」
「失礼致します」

 彼はひとつ頭を下げると、レオリンの隣に進み出た。その間にオーギュストは一言断わって後ろに控えたセシリーの傍にやってくる。

(ねえお父様……一体どういうことなの)
(……セシリー。私はまだ迷っていたが、肚を決めた。この話の後、お前の選択で全てが決まる。だが、どういう道を選ぼうと私はお前の味方だ。だから、本当に自分の望む道を選びなさい。それをさせるために、彼らは来てくれた)

 オーギュストはそれだけ言うと黙ってセシリーの隣に立つ。
 そしてリュアンは、大きくはないが、はっきりとした声で語り始めた。

「ジェラルド殿……たしかに、その者セシリーは、貴国ガレイタムで重用されていたレフィーニ家の血を引く娘です。月の聖女の血を引くこともあり、国家として帰順を申し出るのはやむなき事と心得ます。ですが……ひとつだけ言わせていただくならば、あなたはあの時、国王が決めた取り決めに違反している」
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