冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「お、俺は……そんなつもりじゃ」

 といいつつも、自分の行動を思い返した彼の顔はほんのり赤く染まっている。瞳がちろりとこちらを見て、合った瞬間パッと逸れた。

「……な、なんですか? 堂々としてください」
「は、反応を確かめただけだ。お前こそ、ずいぶん顔が赤いじゃないか」
「あらあら」
「あなたたちねぇ。そんなことよりもせっかくの銘茶を楽しんで下さいよ! あの《ロティーガルズ・プラチナム》ですよ!? まったく、この花の蜜を直接いただく様な芳醇な香りとコク。年に一度味わえるかどうかという至上の一品なのですから! 楽しんで下さい、さあさあ!」

 普段より語気を強めたキースの口調にセシリーは紅茶で口を湿らすのだが……隣のリュアンのおかげでたっぷりと注がれてくる周囲からの生暖かな視線が恥ずかしくてそれどころではない。両手を擦り合わせるばかりで、せっかくの最高級品の味に感動する余裕もなかった……。
< 563 / 799 >

この作品をシェア

pagetop